この記事の結論
国土交通省の調査によると、2025年度の建築物リフォーム受注高は16.4兆円(住宅4.9兆円・非住宅11.5兆円)と過去最高を記録しました。住宅は前年度比18.7%増です。資材価格が値上げされ、新築着工数が減少する中で、既存住宅の活用市場が本格拡大しています。不動産会社が仕入れてリフォームした物件は価格競争力があり、リフォーム代を転嫁できる事業モデルが成り立っています。
リフォーム市場16.4兆円の内訳
リフォーム市場とは、既存の建築物に対する改修・修繕・増改築の総称です。国土交通省が建設業許可業者5,000者を対象に実施している「建築物リフォーム・リニューアル調査」によると、2025年度(令和6年度)の受注高総額は16.4兆円でした。前年度比18.7%増と大幅に伸び、過去最高を更新しています。
内訳は住宅リフォームが4兆9,033億円(前年度比18.7%増)、非住宅が11兆5,071億円(同18.6%増)です。住宅の伸び率が非住宅と同水準で推移しました。これは新築着工数が減少する中で、既存住宅の活用が本格化していることを示しています。
リフォーム受注高の内訳(2025年度)
11.5兆円(70%)
4.9兆円(30%)
総額16.4兆円。住宅の伸び率が高く既存住宅活用が本格化
資材価格の値上げと原価への影響
資材価格の高騰が事業者の利益を圧迫しています。2026年に入り、主要建材の値上げが相次いでいます。
| 資材カテゴリ | 値上げ幅 | 実施時期 |
|---|---|---|
| 水性塗料 | 15〜25% | 2026年4〜5月 |
| 溶剤塗料 | 20〜30% | 2026年4〜5月 |
| 断熱材(原油由来) | 約40% | 2026年4〜5月 |
| 住設機器 | 納期不透明 | 継続中 |
私たちが支援している東海の会社では、リフォーム原価が前年比で1〜2割上昇しました。工期も長期化しています。資材調達の不確実性が、事業者の利益を圧迫する構造が顕在化しています。
収益構造の分岐点
利益を確保する設定
- 成約価格から逆算して設定
- リフォーム範囲を最適化(最小限)
- 工期短縮で資金回転を確保
- 協力業者と固定価格で発注
原価圧迫のパターン
- 売り出し価格から設定
- フルリノベーション偏重
- 工期長期化で資金圧迫
- 変動価格での資材調達
資材高騰下では価格設定と原価管理が成否を分ける
新築着工数の減少と既存住宅活用の本格化
新築住宅着工数の減少がリフォーム市場を押し上げています。全国の住宅着工数は直近で約33,000戸/月と、2019年の約45,000戸から約27%減少しました。建築費高騰で建てても採算が合わず、建売分譲業者の中には更地のまま土地分譲へ変更する動きも見られます。政策金利1.0%時代の不動産融資戦略で解説している通り、融資姿勢の引き締まりも進んでいます。
一方で、既存住宅の取引は堅調です。中古マンションや中古戸建ての成約件数は増加傾向にあります。新築価格の高騰で「購入を断念した層」が既存住宅を活用する動きが加速しています。
リフォーム済み物件が人気の理由
リフォーム済み物件の人気が高まっています。リフォーム代が高騰した結果、購入者自身がリフォームするより完成済み物件を買う方が総額を把握しやすく、工期の不確実性もないためです。不動産会社が仕入れてリフォームした物件は、個人がリフォーム業者に依頼するより割安に仕上がるケースが多く、価格競争力があります。
ただし、リフォーム原価が利益を圧迫する構造も顕在化しています。私たちが支援している東海の不動産会社では、最小限のリフォームで安く売る戦略にシフトし、粗利率を改善しました。
不動産会社の参入タイミングと戦略
今は不動産会社がリフォーム事業に参入する機会です。売り物件が増加し、既存住宅の活用が活発化しています。特に次の3つの動きが顕著です。
第一に、相続案件の増加です。年間の死亡者数は約160万人、相続税の課税対象割合は全国で10.4%(2024年)です。相続した実家の売却では「残置物ごと丸ごと買い取ってほしい」という要望が多く、買い取り再販の入口として有望です。
第二に、中古ビル・店舗の再生需要です。東京都23区では取り壊し後にオフィスから住宅へ用途転換した件数が592件(23.5%)、大阪市では273件(51.5%)と過半を占めました。
第三に、地方でも需要が拡大しています。建築費高騰の影響は全国一律で、地方でも「新築を諦めて既存住宅を活用する」動きが起きています。
平屋需要の急増とリフォーム市場の関係
新築では平屋の需要が急増しています(詳細は平屋着工数22%超が示す商品ラインナップ戦略)。高齢者が階段の上り下りを避けたいという理由ですが、平屋を建てられる広い土地は品不足です。
このため、既存の戸建てをリフォームして平屋に近い生活動線を確保する需要も拡大しています。2階を使わない生活に適した間取り変更、段差解消、手すり設置などです。高齢者の住み替え・施設入居に伴う売却案件と組み合わせると有望な市場です。
中古ビル・店舗の用途転換実例
中古ビル・店舗の用途転換再生が活発化しています。東京都23区では、取り壊し後の主用途としてオフィスから住宅へ転換した件数が592件(23.5%)、大阪市では273件(51.5%)と過半を占めています。
築古ビルを壊さず役割転換する動きも加速しています。再生で資産価値が高まる4条件は、①都心や駅前に立地、②構造部の劣化が少ない、③ホテルなどに用途転換できる、④新築並みの賃料を見込める、です。これらを満たす築古ビルは、解体新築より再生の方がコストを抑えられるケースが多くあります。
収益構造と原価管理の分岐点
収益構造の設計が成否を分けます。資材高騰で原価が上昇している中、利益を確保するには次の判断が必要です。
第一に、価格設定の基準です。私たちが支援している関西の会社では、売り出し価格から1〜2割下げて成約するケースが多くなっています。例えば3,000万円で売り出した物件が2,700万円で成約する場合、リフォーム原価を織り込んだ価格設定が必要です。価格設定の基準を現実的な成約価格から逆算する必要があります。
第二に、リフォーム範囲の最適化です。私たちが関わった東海の会社では、物件を3つの類型に分類しました。A: リフォームなし再販、B: 最小限リフォーム、C: フルリノベーションです。類型Bの比率を上げることで粗利率を改善しました。売上ではなく利益を重視する指標設計については売上・件数ではなく「1人当たり利益」を見る経営で詳しく解説しています。
第三に、工期と資金回転です。リフォーム工期の長期化は資金繰りを圧迫します。工期を短縮できる物件を選び、リフォーム範囲を絞る判断も求められます。
事業化の3つの条件
次の3つの条件を満たしているかを確認する必要があります。
第一に、仕入れルートの拡大です。売り物件の入口を複数持つことです。相続案件・高齢者の施設入居に伴う売却・企業の不動産売却などがあります。具体的には、税理士・司法書士・葬儀会社・介護施設との連携、空き家所有者への直接アプローチ、自治体の空き家バンク活用などが有効です。
第二に、リフォーム業者との協力体制です。自社でリフォーム部門を持つか、協力業者と固定価格で発注できる関係を作るかの選択です。資材価格が変動する中、原価を固定できる発注方式を確立している会社は利益を確保しやすいです。
第三に、商品化力の強化です。私たちが支援している関西の会社では、商品化の粗利率を15%→20%へ改善する目標を立てました。リフォーム範囲の最適化と原価管理を徹底しました。
今後の市場動向と注意点
リフォーム市場は今後も拡大が見込まれます。注意すべき点は3つです。
第一に、資材価格の値上げは一時的なものではありません。構造的な要因(原材料費・人件費・物流コスト)が背景にあり、原価上昇を前提とした事業計画が必要です。
第二に、買い取り再販事業者が増え、業者売主物件が急増しています。業者在庫が積み上がる中、価格競争が激しくなる可能性があります。差別化の鍵は、リフォーム範囲の最適化と原価管理です。
第三に、地域ごとの需要差が鮮明になっています。新築戸建て在庫が高止まりしている地域と、既存住宅の取引が活発な地域に分かれています。地域の需給バランスを見極める必要があります。
最新の要件は、物件所在地の行政機関または専門家にご確認ください。
よくある質問
Q. リフォーム市場16.4兆円の内訳は住宅と非住宅でどう分かれていますか
A. 住宅リフォームが4兆9,033億円(前年比18.7%増)、非住宅が11兆5,071億円です。住宅の伸び率が高く、既存住宅の活用が本格化していることを示しています。
Q. 資材価格の値上げ幅はどのくらいですか
A. 2026年4月から5月にかけて主要建材の値上げが相次ぎました。塗料は15〜30%、断熱材は40%程度の値上げです。私たちが支援している現場では、リフォーム原価が前年比で1〜2割上昇しています。
Q. 新築着工数が減少する中でリフォーム市場が拡大している理由は何ですか
A. 建築費高騰で新築を諦める層が増え、既存住宅を活用する動きが本格化しています。リフォーム済み物件が人気で、高騰するリフォーム代を転嫁できる事業モデルが成り立っているためです。
Q. 不動産会社がリフォーム事業に参入するタイミングとして今は適していますか
A. 売り物件が増加し既存住宅の活用が活発化している今は参入機会です。ただし資材高騰でリフォーム原価が利益を圧迫するため、最小限のリフォームで安く売る戦略も有効です。
Q. リフォーム済み物件が人気の理由は何ですか
A. リフォーム代が高騰しているため、購入者自身がリフォームするより完成済み物件を買う方が総額を把握しやすく、工期の不確実性もないためです。業者が仕入れてリフォームした物件は価格競争力があります。
相談窓口
リフォーム事業への参入や既存住宅活用の戦略の最適解は、扱う物件・地域の需給バランス・協力業者との関係によって変わります。
私たちは東海の会社でリフォーム範囲の最適化と原価管理を支援しました。粗利率を15%→20%へ改善した実例があります。商品化力の強化と利益重視の指標設計を、貴社の実情に合わせて設計します。
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