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平屋着工数が10年で56%増加 商品ラインナップ戦略

平屋着工数は2013年度の37,248戸から2023年度の58,154戸へ10年で56.1%増加。管理費・修繕積立金・駐車場代が不要な戸建ての構造的優位性が背景にあります。

平屋住宅の外観とエクステリア、広い庭と駐車スペースが写る

この記事の結論

国土交通省の建築着工統計によると、平屋着工数は2013年度の37,248戸から2023年度の58,154戸へ10年で56.1%増加しました。背景にあるのは、管理費・修繕積立金・駐車場代が不要という戸建ての構造的優位性です。マンション価格高騰で購入を断念した層が戸建てへ回帰し、高齢化で階段のない平屋を選ぶ層が増えています。商品ラインナップに平屋を組み込む際は、土地面積が広く必要なため郊外・地方都市で適正価格帯に収める設計が鍵になります。

平屋着工数56%増が示す構造変化

平屋とは、居住専用1階建て住宅のことで、階段のない生活動線が特徴です。国土交通省の建築着工統計によると、平屋着工数は2013年度の37,248戸から2023年度の58,154戸へ10年で56.1%増加しました。同じ期間に住居専用住宅全体が50万戸超から38万戸弱へ25.1%減少していることと対照的です。

この増加傾向は、単なる一時的なブームではなく、不動産市場の構造変化を示しています。

第一に、新築マンションの価格高騰で戸建てへの回帰が起きています。不動産経済研究所の調査によると、首都圏の新築マンション平均価格は9,182万円で過去最高を更新しており(2025年時点)、実需層が購入できる価格帯の供給が減少しています。価格高騰で購入を断念した層が、戸建て・賃貸へ流れています。

第二に、高齢化の進行で階段のない平屋を選ぶ層が増えました。内閣府の令和5年度高齢社会対策総合調査では、高齢者が住まいで重視する項目として、医療や介護サービスの受けやすさ、移動・買い物の便利さ、手すり・段差解消などが上位に挙がっています。平屋は段差解消の最終形であり、高齢者にとって理想的な住まいの形です。

第三に、マンションの所有コスト上昇が顕在化しました。国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、修繕積立金と管理費の合計は月26,432円(修繕積立金13,054円、管理費13,378円)が平均です。管理組合の約4割(36.6%)が長期修繕計画に対して積立額不足に陥っており、今後さらなる値上げが予想されます。

平屋着工数と住居専用住宅全体の10年推移(2013→2023年度)

平屋着工数

  • 2013年度: 37,248戸
  • 2023年度: 58,154戸
  • 変化率: +56.1%

住居専用住宅全体

  • 2013年度: 50万戸超
  • 2023年度: 38万戸弱
  • 変化率: -25.1%

平屋着工数が約1.6倍に増加する一方、住宅全体は4分の3に減少

図1 平屋着工数と住居専用住宅全体の10年推移(2013→2023年度)

この3つの要因が重なり、平屋を含む戸建て需要が拡大しています。

なぜ戸建てが選ばれるのか — ランニングコストの実態

戸建てが選ばれる最大の理由は、管理費・修繕積立金・駐車場代が不要であることです。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、マンションの修繕積立金と管理費の合計は月26,432円(修繕積立金13,054円、管理費13,378円)が平均です。駐車場代を加えると月3〜5万円、年間36〜60万円がかかります。30年で1,080〜1,800万円の差が生まれる計算です。

一方、戸建てではこれらが不要です。ただし修繕費は自己責任で積み立てる必要があるため、「管理費・修繕積立金が不要=修繕しなくてよい」わけではありません。むしろ計画的に積み立てなければ、いざ修繕が必要になったときに資金が足りず、放置せざるを得ない事態に陥ります。

項目 マンション 戸建て
管理費 月13,378円(平均) 0円
修繕積立金 月13,054円(平均) 0円(自己責任で積立)
駐車場代 月1〜2万円(都心部は3〜5万円) 0円(敷地内)
月額合計 3.6〜5万円以上 0円
30年合計 1,296〜1,800万円以上 0円

ランニングコストの面で戸建てが圧倒的に有利であることは、消費者にとって「買ってからの負担」を大きく左右します。

政策金利1.0%時代の不動産融資戦略で触れたように、金利上昇と資材価格高騰で損益分岐点が上がっている現在、固定費の少ない戸建ては「買ってから後悔しにくい商品」として選ばれています。

平屋が選ばれる理由と顧客の変化

平屋が特に選ばれる理由は、階段がないことに加えて、生活動線が1フロアで完結することにあります。

高齢者にとっては、階段の上り下りが不要になることで転倒リスクが減り、車椅子での生活も可能になります。子育て世帯にとっては、2階で遊ぶ子供の足音が響かず、洗濯物を2階に運ぶ手間がなくなります。

平屋需要の高まりを受けて、建売業者も平屋の供給を増やしています。ただし平屋は延べ床面積に対して土地面積が広く必要なため、土地単価の高い都心部では総額が高くなります。郊外や地方都市で、適正価格帯に収まる土地を選定することが商品化の鍵です。

また、平屋は屋根面積が広く外壁面積が狭いため、太陽光パネルを載せやすく、外壁塗装のメンテナンスコストが低くなります。長期的な所有コストの面でも有利です。

一方、土地が狭い都心部では延べ床面積を確保しにくく、2階建て・3階建てに比べて供給が限られます。平屋を商品化する際は、商圏の土地単価と購買力を見極め、総額が適正価格帯に収まるエリアを選ぶことが重要です。

商品ラインナップへの組み込み方

平屋を商品ラインナップに組み込む際の判断軸は3つあります。

第一に、商圏の土地単価と購買力です。平屋は土地面積が広く必要なため、土地単価の高いエリアでは総額が高くなります。郊外や地方都市で、土地単価が低く、かつ一定の購買力がある商圏を選ぶことが前提になります。

第二に、顧客層の明確化です。平屋を選ぶ層は、高齢者(60〜70代の住み替え・終の棲家需要)と子育て世帯(30〜40代の新築・建て替え需要)に大きく分かれます。両者で求める設備・間取りが異なるため、どちらをメインターゲットにするかで商品設計が変わります。高齢者向けは手すり・段差解消・断熱性能、子育て世帯向けはリビング広さ・収納量・間取り変更のしやすさが重視されます。

第三に、建築費の見通しです。資材価格は高止まりしており、建築費全体が上昇傾向にあります。私たちが支援している現場では、中小工務店の戸建て価格が前年比で1割程度上昇しているケースがあり、平屋も同様の影響を受けます。

建築費高騰を見越して、仕入れコストと販売価格のバランスを慎重に見極める必要があります。資材調達の遅延や工期の遅延リスクも考慮すべきです。

判断軸 チェック項目
商圏の土地単価 土地単価が低く、かつ一定の購買力があるか
購買力 戸建て価格帯(2,500〜3,500万円)が売れるエリアか
顧客層 高齢者向けか、子育て世帯向けか
建築費 資材価格高騰を見越したコスト設計ができているか
工期 資材調達の遅延リスクを織り込んでいるか

平屋は着工数が増加傾向にあるとはいえ、住宅全体では依然として2階建て以上が主流です。平屋だけに絞り込むのではなく、商品ラインナップの一つとして位置づけ、土地単価・購買力・顧客層に応じて2階建て・平屋を使い分ける戦略が現実的です。

平屋を商品ラインナップに組み込む判断フロー

01 商圏の確認 土地単価が低く、購買力がある郊外・地方都市か
02 顧客層の選定 高齢者向け(手すり・断熱)か、子育て世帯向け(広さ・収納)か
03 建築費の試算 資材高騰を見越したコスト設計と工期遅延リスクの織り込み

平屋だけに絞らず、2階建てと使い分ける戦略が現実的

図2 平屋を商品ラインナップに組み込む判断フロー

リフォーム市場16兆円の背景とセット提案

平屋需要の高まりと並行して、リフォーム市場も拡大しています。国交省の2025年度版データでは、建築物リフォーム受注高は総額16.4兆円で、前年度比18.7%増です。新築価格の高騰で「新築を諦めてリフォームで済ませる」層が増え、既存住宅の老朽化対応や中古住宅流通の活発化が背景にあります。

平屋を提案する際は、リフォームとのセット提案も検討できます。高齢者の住み替え需要で、既存住宅のリフォームか平屋の新築かを比較検討する層が一定数います。売却であれば売買仲介、賃貸であれば管理受託につながり、平屋の新築提案が複数の収益機会を生む入口になります。

地域別の平屋需要の違い

平屋需要の高まりは全国的な傾向ですが、地域によって平屋率に大きな差があります。リクルートのSUUMOリサーチセンター調査(2022年)によると、宮崎県の平屋率は55.8%、鹿児島県は52.4%と過半数を占める一方、東京都は1.4%と最低水準です。

この差は、土地単価の違いが大きく影響しています。平屋は延べ床面積に対して土地面積が広く必要なため、土地単価の高い都市部では総額が高くなります。地方や郊外ほど平屋の供給が現実的な価格帯に収まりやすく、結果として平屋率が高くなります。

私たちが支援している不動産会社の現場では、郊外や地方都市で平屋の成約が増加している一方、都市部では2階建て・3階建てが主流です。自社商圏の土地単価と購買力を見極め、平屋を商品ラインナップに組み込むかどうかを判断することが重要です。

よくある質問

Q. なぜ平屋の着工数がこれほど増加しているのですか?

A. 国土交通省の建築着工統計によると、2013年度の37,248戸から2023年度の58,154戸へ10年で56.1%増加しました。背景には、管理費・修繕積立金・駐車場代が不要な戸建ての構造的優位性があります。高齢化による平屋需要の高まりと、マンション価格高騰で戸建てへの回帰が進んでいることが重なりました。

Q. 平屋とマンションの所有コストはどれくらい違いますか?

A. 国土交通省の調査によると、マンションは管理費・修繕積立金の合計で月26,432円(修繕積立金13,054円、管理費13,378円)が平均です。駐車場代を加えると月3〜5万円、年間36〜60万円かかりますが、戸建てではこれらが不要です。30年で1,080〜1,800万円の差が生まれます。ただし戸建ては自己責任で修繕費を積み立てる必要があります。

Q. 平屋を商品化する際の注意点は何ですか?

A. 平屋は延べ床面積に対して土地面積が広く必要なため、土地単価の高い都心部では総額が高くなります。郊外や地方都市で適正価格帯に収まる土地を選定すること、階段がない生活動線を高齢者・子育て層双方にメリットとして訴求することが重要です。

Q. 新築マンションの価格高騰で戸建て需要が伸びているとのことですが、具体的にどう変化していますか?

A. 首都圏の新築マンション平均価格は9,182万円で過去最高を更新しており、実需層が購入できる価格帯の供給が減少しています。価格高騰で購入を断念した層が戸建て・賃貸へ流れており、私たちが支援している現場では中古戸建ての成約が堅調に推移しています。

Q. 平屋需要は今後も続くと見てよいですか?

A. 高齢化の進行と、管理費・修繕積立金が不要という構造的なコスト優位性は継続します。ただし建築費高騰の影響を受けやすく、資材価格の動向次第で供給が鈍る可能性があります。賃貸アパート・工場・倉庫などの企業需要は堅調で、住宅用の平屋と資材・職人を奪い合う構図です。

相談窓口

平屋需要の高まりと建築費高騰の影響で、商品ラインナップの見直しを検討される不動産会社が増えています。土地単価・購買力・顧客層を踏まえた商品設計、リフォームとのセット提案、地域別の在庫動向を踏まえた価格設定など、自社の強みを活かした戦略が必要です。

リフォーム市場16兆円と価格設定の動向では、リフォーム需要の構造変化と平屋への影響を詳しく解説しています。またYouTube表記のゆれで流入3倍になる実例では、平屋・戸建ての検索需要を取り込む情報発信の型を紹介しています。

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AUTHOR

松本 龍樹

株式会社MCO 代表取締役/宅地建物取引士。代表プロフィールを見る