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不動産会社のKPIツリー|動画から成約までを1本の数字でつなぐ

動画再生→LP流入→反響→訪問→受託→成約の6段階に分解し、各段の歩留まりを測ります。月次で追う数字は5つに絞り、1つ上の段階を増やすか歩留まりを上げるかを判断します。

ノートパソコンの画面に表示された売主集客のKPI管理スプレッドシート

この記事の結論

売主集客の成果を「反響数」だけで追うと、どこが詰まっているか分かりません。動画再生→LP流入→反響→訪問→受託→成約の6段階に分解し、各段の歩留まりを計測すれば、詰まりは1日で見えます。月次で追う数字は5つに絞り、1つ上の段階を増やすべきか歩留まりを上げるべきかを経営者が判断する状態を作ります。

なぜ反響数だけを見ていると詰まりが見えないのか

「今月の反響が減った」という報告を受けたとき、原因はどこにあるのか。

動画の再生回数が減ったのか、動画からサイトへの遷移率が下がったのか、サイトに来た人が査定依頼ボタンを押さなくなったのか。反響数という1つの数字だけでは、詰まっている場所が特定できません。

KPIツリーとは、売上を構成する複数の段階を分解し、各段階の転換率(歩留まり)を掛け算でつないだ構造図です。

不動産会社の売主集客は、動画制作から成約まで少なくとも6つの段階を経由します。その各段階を「歩留まり」でつなぎ、1本のKPIツリーに整理すれば、どこが詰まったかが数字で判明します。

詰まりが見えれば、打ち手は絞れます。動画の再生が減ったなら動画本数を増やす。サイト遷移率が下がったなら動画の概要欄に置くCTAを強化する。反響率が落ちたならLPのフォームを改善する。

逆に、6段階を測らずに「とにかく広告費を増やす」「動画をもっと作る」と動くと、詰まっていない部分に投資してしまい、結果は変わりません。

6段階のKPIツリー全体図

売主集客の数字は、以下の6段階で構成されます。

段階 計算式
月次売上 成約件数 × 手数料単価
↑ 成約件数 媒介受託件数 × 成約率
↑ 媒介受託件数 訪問査定件数 × 媒介率
↑ 訪問査定件数 反響件数 × 訪問率
↑ 反響件数 LP流入数 × 反響率(CVR)
↑ LP流入数 動画再生数 × LP遷移率 + 広告表示回数 × CTR
↑ 動画再生数 動画本数 × 平均再生数/本

売主集客KPIの詰まり診断フロー

01 月次5数字を確認 動画本数・反響・訪問・受託・成約の推移を見る
02 前月比で減った段階を特定 5つのうちどの数字が下がったかを確認
03 歩留まりを深堀り計測 減った段階の転換率を計算し目安と比較する
04 目安の80%判定 歩留まりが目安の80%未満なら先に歩留まり改善、80%以上なら母数を増やす
05 1つずつ改善を回す 効果を確認してから次の施策に進む

詰まりは1日で特定できる。母数と歩留まりを同時に変えると効果測定ができなくなる。

図1 売主集客KPIの詰まり診断フロー(5ステップ)

最下段の「動画本数」から最上段の「月次売上」まで、すべての段階が掛け算でつながっています。1つの段階が詰まると、その下の全段階に影響します。

逆に言えば、1つの段階を改善すれば、その下の全段階が改善されます。この構造を理解すれば、「どこを直せば最も効率よく売上が上がるか」が計算で分かります。

各段階の歩留まりと目標値

各段階の転換率には、売主集客の運用実績から算出した目安があります。自社の数字と比較し、目安を大きく下回っている段階があれば、そこが詰まっている箇所です。

KPI 目標値 計測方法 改善の打ち手
動画本数 初期60本・月+4本 YouTube Studio 継続投稿
平均再生数/本 初月200→12ヶ月後1,000 YouTube Studio タイトル・サムネ改善
LP遷移率(動画→LP) 5% UTMパラメータ・GA4 概要欄CTA強化
広告CTR 1.5% Meta広告マネージャ クリエイティブABテスト
反響率(CVR) 0.7% フォーム到達率・送信率 EFO・信頼要素強化
訪問率 60% 反響台帳 初動トーク改善
媒介率 27% 反響台帳 クロージング改善
成約率 60% 反響台帳 売主フォロー・価格戦略

これらの目安は、商圏の競合状況・物件単価・地域特性によって変動します。自社の実績を3ヶ月計測し、その平均値を「自社の標準値」として設定してください。

目安を大きく下回っている段階があれば、そこから優先的に改善します。

1つ上の段階を増やすべきか、歩留まりを上げるべきかの判断基準

詰まっている段階を特定したら、次は「母数を増やすか、歩留まりを上げるか」の判断です。

改善判断の2択(歩留まり80%が分岐点)

歩留まり < 目安の80%

  • 先に歩留まりを改善
  • 訪問率40%(目安60%)→ 初動トーク改善
  • 反響率0.4%(目安0.7%)→ LP・フォーム改善
  • 成約率40%(目安60%)→ クロージング強化
  • 穴の開いたバケツを先に塞ぐ

歩留まり ≧ 目安の80%

  • 1つ上の段階の母数を増やす
  • 訪問率60%達成 → 反響件数を増やす
  • 反響率0.7%達成 → LP流入数を増やす
  • 動画本数・広告費に投資
  • 歩留まり改善は頭打ちになる

両方同時に手を付けると、どちらが効いたか分からなくなる。

図2 改善判断の2択(歩留まり80%が分岐点)

判断の鉄則: 歩留まりが目安の80%を切っているなら、先に歩留まりを改善します。歩留まりが目安に届いているなら、1つ上の段階の母数を増やす施策に投資します。

例えば、訪問率が40%(目安60%の67%)なら、先に初動トークを改善して訪問率を上げます。訪問率が60%に届いてから、反響件数を増やす施策(広告費増額・動画本数増加)に投資します。

なぜこの順序なのか。歩留まりが低い状態で母数を増やすと、「穴の開いたバケツに水を注ぐ」状態になり、投資対効果が下がるためです。

逆に、歩留まりが目安に届いているなら、それ以上改善しても効果は頭打ちになります。その段階では、1つ上の母数を増やす方が効率的です。

両方同時に手を付けない: 母数を増やす施策と歩留まりを上げる施策を同時に実施すると、どちらが効いたか分からなくなります。1つずつ手を付け、効果を確認してから次に進みます。

月次で追う数字を5つに絞る

KPIツリーの全段階を毎月追うと、数字の海に溺れます。経営者が月1回30分で見切れる量に絞り、判断に集中する状態を作ります。

月次で追う5つの数字

  1. 動画本数(投稿継続の確認)
  2. 反響件数(集客の総量)
  3. 訪問件数(初動対応の質)
  4. 受託件数(クロージングの質)
  5. 成約件数(売上の直接指標)

これ以外の数字(LP遷移率・広告CTR・反響率など)は、詰まりを疑った段階で深堀りします。日常的には追いません。

計測の頻度

  • 日次で見る数字: 広告表示・クリック、動画再生、反響件数(フォーム通知・電話着信)
  • 週次で見る数字: 反響→訪問の転換状況、訪問→受託の進捗
  • 月次で見る数字: 上記の5つ + チャネル別のCPL(反響単価)・CPO(成約単価)
  • 四半期で見る数字: 年間売上進捗、LTV(顧客生涯価値)、ストック収益比率

日次で細かく追うと疲弊します。週次で傾向を掴み、月次で判断を下す粒度が現実的です。

チャネル別の反響単価・成約単価を記録する

「反響が取れている」だけでは判断できません。その反響を取るのにいくらかかったか、成約までいくらかかったかを記録します。

年月 チャネル 広告費 反響件数 CPL 成約件数 CPO
2026-10 Meta広告 150,000円 15件 10,000円 1件 150,000円
2026-10 YouTube 0円 3件 0円 1件 0円

計算式 - CPL(反響単価)= 広告費 ÷ 反響件数 - CPO(成約単価)= 広告費 ÷ 成約件数

この記録を3ヶ月続けると、チャネルごとの費用対効果が見えます。CPOが許容範囲を超えたチャネルは停止し、CPOが低いチャネルに予算を寄せます。1つのチャネルに依存すると、競合参入や規約変更で一気に崩れます。売主向けサイトやYouTube、SEOなど3つ以上のチャネルを持ち、リスクを分散します。

AIに任せられるのは集計であって、判断ではない

KPIダッシュボードをGAS(Google Apps Script)で自動化すれば、YouTube Analytics API・Meta Ads API・GA4 APIからデータを取り込み、スプレッドシートに集計できます。

しかし、AIに任せられるのは「どの数字が下がったか」という事実の集計までです。

「なぜ下がったか」「どう直すか」の判断は、現場を見ている人間にしかできません。

  • 反響が減った原因が、商圏の季節変動なのか、競合の新規参入なのか、自社の運用ミスなのか
  • 訪問率が下がった原因が、初動トークの質なのか、反響の質が変わったのか、担当者の稼働不足なのか
  • 成約率が下がった原因が、売主の価格期待が高すぎるのか、クロージングの弱さなのか、競合の条件が良いのか

これらの判断は、数字の裏側にある「顧客の顔」「商圏の空気」「営業の動き」を知っている経営者にしかできません。

AIは集計を任せるツールです。判断を委ねるものではありません。

資金繰り表とセットで運用する

売買仲介の手数料は決済時に入金されます。受託から決済まで3〜6ヶ月かかるため、「受託しているが入金ゼロ」の期間が必ず発生します。

KPIツリーで「今月の受託件数3件」が見えても、その入金は3〜6ヶ月後です。資金繰り表とセットで運用し、立ち上げ期の資金ショートを防ぎます。

実装の具体的手順

KPIツリーを自社に導入する手順は以下の通りです。

1. 反響台帳を作る(初日)

Googleスプレッドシートに以下の列を作ります。

  • 反響日 / 氏名 / 電話番号 / メール / 物件住所 / 流入チャネル / 訪問日 / 受託日 / 成約日

すべての反響をこの1枚に記録します。

2. チャネルを分ける(初日)

動画・広告・SEO・紹介など、流入チャネルごとにUTMパラメータを設定し、GA4で計測します。

3. 3ヶ月計測する(1〜3ヶ月目)

KPIツリーの各段階を3ヶ月計測し、自社の標準値を算出します。

4. 月次レビューを開始(4ヶ月目〜)

月末に5つの数字を見て、詰まりがあれば深堀りします。

5. 改善を1つずつ回す

母数を増やす施策と歩留まりを上げる施策を同時に実施せず、1つずつ手を付けます。

よくある質問

Q. なぜ反響数だけを追っても詰まりが見えないのですか?

A. 反響が減ったとき、動画再生が減ったのか、LP遷移率が下がったのか、反響率が落ちたのかが区別できないためです。6段階に分解すれば、どこが詰まったかが1日で判明し、改善の打ち手を絞れます。

Q. 各段階の歩留まり目安はどこから来た数字ですか?

A. 私たちが実際に支援した売主集客の運用実績から算出した平均値です。商圏・物件単価・競合状況で変動するため、自社の実績を3ヶ月計測して目標値を更新してください。

Q. 月次で追う数字を5つに絞る理由は何ですか?

A. 6つ以上追うと形骸化します。経営者が月1回30分で見切れる量にし、判断に集中する状態を作るためです。5つは動画本数・反響件数・訪問件数・受託件数・成約件数です。

Q. AIに任せられるのは集計だけで、判断は人間がすべき理由は何ですか?

A. どの数字が下がったかはAIが集計できますが、その原因が商圏の季節変動なのか、競合参入なのか、自社の運用ミスなのかは、現場を見ている人間にしか判断できないためです。

Q. 1つ上の段階を増やすべきか、歩留まりを上げるべきかの判断基準は?

A. 歩留まりが目安の80%を切っているなら、先に歩留まりを改善します。歩留まりが目安に届いているなら、1つ上の段階の母数を増やす施策に投資します。両方同時に手を付けると、どちらが効いたか分からなくなります。

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AUTHOR

松本 龍樹

株式会社MCO 代表取締役/宅地建物取引士。代表プロフィールを見る