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再建築不可物件の見極め方と価値創造──協定による救済措置の実務

建築基準法上の道路に接しない敷地でも、沿道所有者全員で協定書を作成し、通路の維持や拡幅を約束することで、特定行政庁の許可を得て建築可能に転換できる制度がある。許可は協定を前提とするため、次の所有者も建築可能。

道路台帳と協定書の資料を確認する不動産業者

この記事の結論

建築基準法上の道路に接しない敷地でも、沿道所有者全員で協定書を作成し、通路の維持や拡幅を約束することで、特定行政庁の許可を得て建築可能に転換できる制度がある。一般的な43条但し書き許可と異なり、協定を前提とした許可は次の所有者も建築可能になる点で、買取再販を前提とする事業者にとって重要な選択肢となる。

再建築不可物件とは

再建築不可物件とは、建築基準法の道路要件を満たさない物件を指す。具体的には、幅員4m以上の道路に2m以上接していない土地は、建築確認が下りないため、既存建物を取り壊すと新築できない。

この物件が流通市場に出回る理由は3つある。相続で引き継いだが使い道がない、老朽化した建物を建て替えられない、売却しようにも買い手が限られる。一般の仲介会社は敬遠するため、価格は通常の物件より2〜3割安くなることが多い。

しかし、「再建築不可」は永遠の烙印ではない。行政ごとに用意された制度を使えば、非道路物件を建築可能な状態に転換できる。問題は、その制度が行政によって異なり、手続きも一様でないことだ。

行政ごとに異なる制度──比較表で見る3つの道

再建築不可物件を建築可能にする制度は、行政によって3つのパターンに分かれる。

協定型43条許可と一般的な43条許可の実務上の違い

協定型43条許可

  • 沿道全員で協定書を作成
  • 一度許可を取れば次の所有者も建築可能
  • 転売時に価値が上がる
  • 初回のみ協定書巻きの手間

一般的な43条許可

  • 建築のたびに個別申請が必要
  • 次の所有者が必ず許可を得られるとは限らない
  • 再販を前提とする場合リスクが残る
  • 建築審査会の同意が必要

協定型は買取再販業者にとって重要な選択肢。位置指定道路は開発許可と道路工事が必要でまとまった面積が前提。

図2 協定型43条許可と一般的な43条許可の実務上の違い
制度 適用自治体 手続き 次所有者の建築 許可の性質
協定型43条許可 尼崎市など一部自治体 沿道全員で協定書→許可申請 可(協定を守れば) 包括同意基準による許可
一般的な43条許可 多くの自治体 建築のたびに個別申請 不確実(個別判断) 建築審査会の同意が必要
位置指定道路 全国 道路築造→位置指定申請 道路として認定

協定を前提とした43条許可は、一度協定を組めば次の所有者も建築可能になる点で、一般的な43条但し書き許可と大きく異なる。一般的な43条許可の場合、建築のたびに新規申請が必要で、次の所有者が必ず許可を得られるとは限らない。再販を前提とする買取再販業者にとって、この違いは商品化戦略の根幹を左右する。

位置指定道路は、自分で道路を築造して道路として認定してもらう方法だが、開発許可の取得と道路工事が必要なため、まとまった面積がないと現実的でない。

協定による43条許可の実務手順

協定を前提とした43条許可は、沿道全員で協定書を作成し、特定行政庁に提出することで非道路敷地を建築可能に転換する仕組みだ。実際の手順を7ステップで示す。

  1. 物件の道路状況を確認する: 道路台帳で、接道が建築基準法上の道路に該当しないことを確認する。現地で通路の幅員を実測し、向かい側の建物が別の道路に接道しているかも確認する。この段階で、片側セットバックで済むか両側セットバックが必要かが見えてくる。

  2. 沿道所有者を特定する: 登記簿で所有者を確定し、現地で居住状況を確認する。住んでいない物件、法人所有、相続で所有者が複数に分かれているケースもあるため、登記簿の権利部(甲区・乙区)まで読み込む。相続が発生している場合は、法定相続人全員を特定する必要がある。

  3. 協定書の内容を設計する: 車両通行・ライフライン掘削工事への同意を記載し、建築制限(階数・用途など)を明記する。協定書には、セットバック範囲を図面で示し、将来のトラブルを避けるため曖昧な表現を排除する。車両通行の定義(緊急車両・一般車両の区別)、ライフライン掘削の範囲(上下水道・ガス・電気)も具体的に書く。

  4. 沿道所有者に説明する: 会えるか会えないかが最大の分岐点。会えれば、制度の仕組みと所有者側のメリット(通路が整備されることで、将来自分たちも建て替えやすくなる)を説明し、理解を得られることが多い。不在の場合は、手紙で制度の概要を伝え、訪問日時を複数提示する。

  5. 協定書に署名・捺印をもらう: 不在・多忙で会えない所有者には、何度も訪問するか、手紙と電話で粘り強く接触する。法人所有の場合、代表者印が必要なので、法人登記簿で代表者を確認する。相続で所有者が複数の場合、全員の同意が必要なため、相続人全員に連絡を取る。

  6. 特定行政庁に提出する: 協定書を建築指導課などに提出し、審査を受ける。提出書類は、協定書原本・図面(セットバック範囲を明示)・沿道所有者の登記簿謄本・印鑑証明書など。審査期間は案件によって異なるが、書類に不備がなければ数週間から1ヶ月程度。

  7. 許可を得て建築可能になる: 包括同意基準に適合する場合、建築審査会への諮問を省略して許可される自治体もある。許可を得た時点で、次の所有者も協定を守れば建築可能になる。建築確認申請時に、許可書の写しを添付すれば、建築基準法の接道要件をクリアできる。

時間・費用・手間がかかるため、仕入れ金額は安くなる傾向がある。しかし、一度協定を組めば次の所有者も建築可能という制度的な優位性があり、転売時の価値が大きく上がる。協定書作成の労力を諸経費として織り込み、転売価格から逆算して仕入れ価格を決める。

セットバック計算の実務

建築基準法では、道路幅4m以上が必要だ。通路幅が4m未満の場合、道路の中心線から2mずつセットバック(後退)して4m道路を確保する。これが両側後退の原則だ。

しかし、「片側後退」が適用される場合もある。理由は、向かい側が既に別の建築基準法上の道路に接道している場合や、がけ地・河川などがある場合、向かい側はセットバック不要だからだ。この場合、こちら側のみが後退する。

セットバック距離の計算は、現況の通路幅と道路中心線の位置から算出する。例えば、現況通路幅が2.8mで向かい側がセットバック不要の場合、こちら側のみで4m道路を確保するため、2.8mから4mへの不足分を後退することになる。

協定による許可を得た後は、道路台帳の記載が変わる自治体もある。この変化は、行政が正式に通路を認めた証拠であり、次の所有者も建築可能になる根拠だ。

セットバック後の有効敷地は減少するが、それでも建築可能になる価値は大きい。私道負担部分を含めた全体の敷地面積と、建築可能な有効敷地面積を明確に分けて査定する必要がある。

狭小敷地・階数制限を克服する商品化プラン

協定書で階数制限がある場合、どうやって商品化するか。答えは「ロフト活用」と「吹き抜け差別化」だ。

協定書で階数制限があっても、高さ制限がないケースが多い。この隙間を突いて、2階建て+ロフトで実質的な居住面積を増やせる。ロフトは建築基準法上、天井高1.4m以下・床面積が階の2分の1未満であれば階数にカウントされない。この要件を満たすロフトを設計すれば、収納や書斎として使える空間が生まれる。

吹き抜けのある魅力的なプランにすることで、狭小でも開放感のある住宅として差別化できる。1階リビングに吹き抜けを設け、2階から光を取り込む設計にすれば、圧迫感のない空間になる。駐車場なしのコンパクトな住宅として、単身者や子育て世代(駅近で車を持たない層)に需要を取り込む戦略だ。

ただし、高度地区が指定されている自治体では北側斜線が厳しい。北側斜線は、北側隣地の境界線から一定の勾配(高度地区の種別によって異なる)で高さ制限がかかる仕組みだ。東向きや南向きの土地でも北側から斜線がかかり、上層部が削られる可能性がある。

設計段階で北側斜線を確認し、2つの対応策を検討する。1つは、カクカクした屋根(北側を低く、南側を高くする段差屋根)で斜線をクリアする方法。もう1つは、最初から2階建て+ロフトに絞り、北側斜線の影響を受けない高さに抑える方法だ。どちらが適切かは、建築士と相談して決める。

間口が狭い場合、狭小住宅の設計ノウハウが必要だ。階段の配置・収納の工夫・採光の確保が、狭小住宅の住みやすさを左右する。しかし、狭小敷地で階数制限という条件は、他社が敬遠する要因でもあるため、仕入れ金額は安くなる傾向がある。価値創造の余地が大きいと言える。

仕入れ戦略──レインズ新着と「やこしい物件」の狙い方

再建築不可物件の情報源は、レインズの新着を毎日チェックすることだ。一般売主が業者に預けたものを、仲介経由で購入する。ポータルサイトには出にくいため、レインズが最も確実な情報源になる。

「やこしい物件」は、他社が敬遠するため安価で出る。協定書巻きに手間がかかる、20坪で2階建て制限、電線越境がある、といった要素が重なるほど、仕入れ金額は安くなる。逆に言えば、価値創造の余地が大きい。

電線越境がある場合、2つの解決方法がある。1つは、越境している電線の所有者(電力会社)と覚え書きを交わし、将来の建て替え時に引き込み直すことを約束する方法。覚え書きには、越境の範囲・建て替え時の対応・費用負担の原則を明記する。もう1つは、電柱に腕を出して引き込み直す工事を先に済ませる方法だ。工事費用は数十万円かかるが、転売時に越境リスクがないことを明示できる。どちらが適切かは、物件の立地・転売先の属性(一般客か業者か)・工事費用の回収可能性で判断する。

仕入れ判断のスピードも重要だ。良い物件は1時間で買付を入れるスピード感が求められる。協定書巻きの手間と費用を織り込んだ上で、転売価格から逆算して仕入れ価格を決める。

具体的な逆算方法はこうだ。まず、需要価格(この立地・この間口・この広さで買う人がいくら出すか)を設定する。この段階で、AI査定の精度と売主への説明で示したような類似事例の相場データを参照すると、需要価格の精度が上がる。次に、諸経費を積算する。建物解体費(既存建物があれば)、協定書巻きの費用(行政書士報酬・住民への説明費用・印鑑証明取得費用など)、測量費(境界確定が必要なら)、電線越境の解決費用、建築プラン設計費、建築費、不動産取得税・登録免許税、仲介手数料、金融機関への利息、保有期間中の固定資産税、転売時の仲介手数料を全て列挙する。

需要価格から諸経費と期待利益を引いたものが、仕入れ価格の上限だ。この計算を短時間でできるかどうかが、仕入れ営業の実力を測る指標になる。経験を積むと、現地を見た瞬間に頭の中で諸経費を積算し、需要価格から逆算して買付価格を決められるようになる。

協定による43条許可のフロー(協定書作成から建築可能まで)

01道路状況確認道路台帳で非道路を確認、幅員実測
02所有者特定登記簿で沿道所有者全員を確定
03協定書設計車両通行・掘削同意・建築制限を記載
04所有者説明制度の仕組みと将来メリットを伝える
05署名・捺印沿道所有者全員の同意を取得
06行政提出特定行政庁に協定書を提出し審査
07建築可能化許可取得、次の所有者も建築可能に

一度協定を組めば次の所有者も建築可能。一般的な43条許可は建築のたびに個別申請が必要。

図1 協定による43条許可のフロー(協定書作成から建築可能まで)

協定書作成の分岐点──「会えるか会えないか」

協定書作成の実務で最大の分岐点は、「沿道所有者に会えるか会えないか」だ。

会えれば、制度の仕組みと所有者側のメリット(通路が整備されることで、将来自分たちも建て替えやすくなる)を説明し、理解を得られることが多い。逆に、不在・多忙で会えない所有者には、何度も訪問するか、手紙と電話で粘り強く接触する。

私たちが支援している現場では、住んでいない物件、忙しくてなかなか会えない所有者もいたが、制度の説明と将来のメリットを伝えることで、最終的には全員の同意を得られた事例がある。

協定書には、車両通行・ライフライン掘削工事への同意、建築制限(階数など)、セットバック範囲などを明記する。法的拘束力のある文書なので、後でトラブルにならないよう、曖昧な表現を避け、図面も添付する。

時間・費用・手間がかかるため、仕入れ金額は安くなる傾向がある。しかし、一度協定を組めば次の所有者も建築可能という制度的な優位性があり、転売時の価値が大きく上がる。この差額が、協定書作成の労力に見合うリターンになる。

関連する実務領域

再建築不可物件の価値創造は、不動産仕入れの一分野に過ぎない。同じく「みんなが買えない物件」を扱う領域として、所有者不明不動産の買い方も押さえておきたい。

改正民法で動き出す「所有者不明不動産」──九州サイズの土地問題と買える4つの制度では、相続財産清算人選任・不在者財産管理制度・所有者不明土地管理制度・特定不能土地管理制度の4つを比較し、空き家849万戸という数字の背景と、持ち主のわからない家が生まれる4ステップの構造を示している。

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鑑定評価の威力を知るなら、不動産鑑定評価の威力──国税局の路線価算定に関わる鑑定士の評価は国自身が否定しにくいを読んでほしい。年間合格者150人の狭き門を突破した鑑定士の評価は、国税局が路線価算定を受託する構造上、国自身が否定しにくい。訳あり物件の価格交渉で鑑定評価を使う場面もある。

よくある質問

Q. 協定による43条許可と、一般的な43条但し書き許可の違いは何ですか?

A. 協定を前提とした43条許可は、沿道所有者全員で通路の維持や拡幅を約束することで、次の所有者も同じ条件で建築可能になります。一般的な43条但し書き許可は、建築のたびに個別の許可申請が必要で、次の所有者が必ず許可を得られるとは限りません。

Q. 協定書巻きの実務手順と所要期間はどのくらいですか?

A. 沿道全員で協定書を作成し、車両通行・ライフライン掘削工事への同意、通路の維持や拡幅の約束を記載して特定行政庁に提出します。時間・費用・手間がかかりますが、制度の仕組みと住民側のメリットを説明できれば理解を得られることが多いです。所要期間は物件ごとに異なりますが、住民との調整が最大の変数です。

Q. セットバックの計算方法を教えてください。

A. 建築基準法で道路幅4m以上が必要です。道路中心線から両側2mずつセットバックするのが原則ですが、向かい側が既に別の道路に接道している場合など、片側のみセットバックで済む場合もあります。セットバック距離は現況の通路幅と道路中心線の位置から計算します。

Q. 狭小敷地で階数制限がある場合、どうやって商品化するのですか?

A. 協定書で階数制限があっても、高さ制限がないケースが多いため、ロフトを活用して実質的な居住面積を増やせます。吹き抜けのある魅力的なプランで差別化し、狭小でも駐車場なしのコンパクトな住宅として需要を取り込む戦略が考えられます。北側斜線には注意が必要です。

Q. 再建築不可物件を仕入れる際、どこで情報を得るのですか?

A. レインズの新着を毎日チェックします。協定書巻きに手間がかかる物件は他社が敬遠するため安価で出ます。協定書巻きに手間がかかる物件ほど仕入れ金額は安く、逆に言えば価値創造の余地が大きいと言えます。

相談窓口

再建築不可物件の仕入れ判断や、協定書巻きの実務は、行政ごとの制度理解と沿道住民との交渉力が求められます。AI査定で適正価格を算出し、過去の類似事例から転売価格を逆算することで、仕入れ判断の精度を上げることができます。3分診断でS〜D判定 AI活用診断ツールの実装で示したような診断ツールを活用すれば、仕入れ業務の効率化余地も可視化できます。

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AUTHOR

松本 龍樹

株式会社MCO 代表取締役/宅地建物取引士。代表プロフィールを見る