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相続税課税割合10.4%を売主集客に変える方法

全国で被相続人数は年間160万人超、課税割合10.4%。富裕層・高齢者との関係強化、相続セミナー、税理士・司法書士との連携体制が受託の鍵。

相続税の申告書類と不動産登記簿謄本が並ぶ机上の風景

この記事の結論

全国で被相続人数は年間160万人超、相続税の課税割合は10.4%に達している。都道府県別では東京20.0%、愛知16.2%、広島10.3%、熊本5.6%と地域差が大きい。相続案件は売却依頼件数の増加要因であり、富裕層・高齢者との関係強化が受託の鍵となる。相続セミナー・相続相談会の企画設計と、税理士・司法書士との連携体制の構築が、相続案件を売主集客に変える現実的な手順である。

全国で10人に1人が相続税の対象

相続税の課税対象となる層は拡大傾向にあり、不動産売却ニーズの母数が増えている。国税庁の統計(2024年)によれば、全国の被相続人数は1,605,378人、このうち相続税の申告対象となった被相続人数は166,730人、課税割合は10.4%となっている。2023年の9.9%から0.5ポイント上昇している。

課税割合10.4%とは、亡くなった人の10人に1人が相続税の申告対象になるという意味である。基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)を超える財産を持つ層がこれに該当する。たとえば法定相続人が2人の場合、基礎控除は4,200万円となる。不動産を所有している場合、この水準に達する世帯は決して少なくない。なお、相続税の最新の要件は税理士等の専門家にご確認ください。

被相続人数は160万人超という数字も重要である。日本の年間死亡者数は約160万人であり、高齢化と人口構成の変化により、この数は今後も高止まりする。相続案件の絶対数が減らないという構造的な背景がここにある。

都道府県別の相続税課税割合と富裕層人口

相続税の課税割合は地域によって大きく異なり、自社商圏での市場規模を把握することが売主集客の第一歩となる。最も高いのは東京都の20.0%、次いで愛知県の16.2%である。一方、最も低いのは青森県の3.5%、熊本県は5.6%、広島県は10.3%となっている。

地域別の相続案件市場の特徴と自社商圏の見極め方

高課税割合地域(東京20.0%・愛知16.2%)

  • 相続案件の発生頻度が高い
  • 競合も多く差別化が必要
  • 富裕層人口が集中(東京15,397人)
  • 専門性とスピードが受託の鍵

低課税割合地域(青森3.5%・熊本5.6%)

  • 課税割合は低めでも被相続人数の絶対数がある
  • 相続に伴う売却ニーズは一定規模で存在
  • 年収1億円以上は少数だが課税対象層は幅広い
  • 地域での認知が受託の鍵

課税割合×被相続人数=潜在案件数。自社商圏の数値を把握し、地域特性に合った集客設計を立てる

図1 地域別の相続案件市場の特徴と自社商圏の見極め方
都道府県 被相続人数 申告に係る被相続人数 課税割合 年収1億円以上の人数
全国 1,605,378人 166,730人 10.4% 38,000人
東京 140,329人 28,085人 20.0% 15,397人
愛知 82,618人 13,398人 16.2% 2,326人
広島 35,599人 3,682人 10.3% 527人
熊本 24,660人 1,370人 5.6%
青森 20,511人 724人 3.5%

年収1億円以上の人数も合わせて見ると、富裕層の地域集中が明確に見える。東京は15,397人、大阪2,513人、愛知2,326人と大都市圏に集中している。一方、地方中核都市では広島527人、岡山237人といった規模となる。

岡山県の内訳を見ると、年収1〜2億円が166人、5億円以下が52人、10億円以下が13人、20億円以下が2人、50億円以下が3人、100億円以下が1人となっている。年収1億円以上という層はごく一部であるが、相続税の課税対象となる層はこれよりも幅広い。

地域ごとの課税割合と富裕層人口を把握することで、自社商圏での相続案件の市場規模を推定できる。東京・愛知のような高課税割合地域では、相続案件の発生頻度が高く、競合も多い。一方、地方都市では課税割合が低めでも、被相続人数の絶対数があるため、相続に伴う不動産売却ニーズは一定規模で存在する。

相続案件が売却依頼件数の増加要因となる構造

相続案件が売却依頼件数の増加要因となる背景には、高齢化・建物老朽化・不動産市場の構造変化という3つの要因がある。厚生労働省の人口動態統計によれば、2024年の死亡者数は160万5378人で過去最多となり、75歳以上の高齢者の死亡数が全死亡数の8割を占めている。死亡者数の高止まりと高齢化の進行により、相続案件は今後も一定規模で発生し続ける。

第一に、高齢化と多死社会の進行である。被相続人数は年間160万人超で推移しており、この傾向は今後も続く。相続人の多くは、被相続人が所有していた不動産を売却する選択肢を検討する。相続人が遠方に住んでいる、複数の相続人で遺産を分割する必要がある、固定資産税や管理費の負担を避けたいといった理由から、相続後に売却する動きが一般化している。

第二に、建物の老朽化と保有コストの上昇である。相続した実家の多くは築30年以上の古い建物であり、修繕費用や固定資産税の負担が重い。空き家のまま放置すると固定資産税の軽減措置が外れ、税額が上がるリスクもある。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では、全国の空き家数は約900万戸に達している。相続人にとって、早期に売却して現金化する方が合理的な選択となるケースが増えている。

第三に、不動産市場の構造変化である。国土交通省の地価公示(2026年)では、全国・全用途の平均変動率は前年比2.8%上昇し、5年連続の上昇となっている。中古マンション市場では、2025年3月の取引件数が2019年以降過去最多を記録した。価格上昇が続く一方で、相続した不動産を保有し続けるよりも、売却して資産を組み替える動きが活発化している。

私たちが不動産会社の支援をしている現場では、相続案件の発生件数が増加しており、売り物件の供給が増える傾向が続いている。売買仲介業にとっては、相続案件への対応体制を整えることが、安定した受託件数の確保につながる。

市況に影響されない安定収入源の作り方

富裕層・高齢者との関係強化が受託の鍵

相続案件を売主集客に変えるためには、富裕層・高齢者との関係強化が不可欠であり、定期セミナー・士業連携・継続的な情報提供という3つの型がある。私たちが支援している不動産会社の現場では、相続セミナーを定期開催し、税理士・司法書士と共催する形で信頼を得ている企業が、相続案件の受託件数を安定的に確保している。

富裕層・高齢者との関係強化は、単発の営業活動では成立しない。相続や資産管理の相談は、税理士や司法書士といった士業と並んで、不動産会社が相談先として認知される必要がある。そのための具体的な型は3つである。第一に定期的なセミナー・相談会の開催。相続税の仕組み・実家の処分・高齢者施設への入居といった実務的なテーマで参加者との接点を作り、個別相談で具体的な案件に転換する。第二に税理士・司法書士との共催イベント。士業と連携している姿勢を示すことで、「売り込まれる」という警戒感を和らげ、共催者の顧客リストにもアプローチできる。第三に継続的な情報提供とフォローアップ。セミナー参加者リストをLINE公式アカウントやメールリストに登録し、相続税制の改正・不動産市況の動向・空き家対策の最新情報といったテーマで月1回程度の配信を続ける。単発イベントで終わらせず、人脈をストック資産として育てる視点が重要である。

相続案件を売主集客に変える3つのステップ

01 定期セミナー・相談会 相続税・実家処分・施設入居などのテーマで参加者との接点を作り、個別相談で具体的な案件に転換する
02 税理士・司法書士との共催 士業と連携している姿勢を示し、売り込まれる警戒感を和らげる。共催者の顧客リストにもアプローチ
03 継続的な情報提供 参加者リストをLINE・メールに登録し、税制改正・市況動向・空き家対策を月1回配信。人脈をストック資産化

単発イベントで終わらせず、相続全般の相談窓口として認知されることが受託の鍵

図2 相続案件を売主集客に変える3つのステップ

相続案件への対応は、売買仲介だけでなく、賃貸管理や資産コンサルティングといった周辺事業にも広がる。不動産会社が相続案件の総合窓口として機能することで、受託の可能性が高まる。相続人が遠方に住んでいる場合、賃貸管理から売却まで一貫して対応できる体制があると、相続人の負担が減り、受託につながりやすい。

相続セミナー・相続相談会の企画設計

相続セミナーを企画する際の実務的なポイントは3つである。第一にテーマ選定。参加者の年齢層に合わせ、50代〜60代には生前対策、70代以上には相続後の手続きを軸とする。第二に集客ルート。自社顧客リスト・士業の顧客リスト・地域の自治会・SNS広告を組み合わせる。「相続セミナー」より「終活セミナー」の方が参加ハードルは低い。第三にリピート設計。月1回または2ヶ月に1回の継続開催で、「相続の相談ならあの会社」という地域での認知を定着させる。

売主集客の3つの打ち手

税理士・司法書士との連携体制の作り方

税理士・司法書士との連携体制を作る実務手順は3つである。第一に相互紹介の仕組み。不動産会社は相続税の試算や登記が必要な顧客を士業に紹介し、士業は不動産の売却が必要な顧客を不動産会社に紹介する。紹介料を設定するのではなく、顧客満足度を共通の指標とする方が長期的な関係を築きやすい。第二に定期的な情報交換の場。月1回または2ヶ月に1回のペースで、相続税制の改正・不動産市況の動向・個別案件の進捗を共有する。第三にWIN-WIN-WINの設計。不動産会社にとっては売却案件の獲得、士業にとっては顧客の拡大、顧客にとってはワンストップで相続の相談ができるという三者のメリットを明確にする。

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よくある質問

Q. 相続税の課税割合10.4%とは何の割合ですか

A. 全国の被相続人(亡くなった人)のうち、相続税の申告対象となった人の割合です。2024年の被相続人数は1,605,378人、このうち申告に係る被相続人数は166,730人で、割合は10.4%(2023年は9.9%)です。地域差が大きく、東京は20.0%、青森は3.5%となっています。

Q. なぜ相続案件が売却依頼件数の増加要因になるのですか

A. 相続した実家を売却する動きが増えているためです。高齢化と人生100年時代で相続案件数は増加傾向にあり、被相続人の多くは不動産を所有しています。相続人が遠方に住んでいる、複数の相続人で分割が必要、固定資産税や管理費の負担を避けたいといった理由から、相続後に売却する選択肢が選ばれやすくなっています。

Q. 富裕層や高齢者との関係強化は具体的にどうすればよいですか

A. 相続セミナーや相続相談会などのイベントを定期開催し、税理士・司法書士と共催する形で信頼を得る方法が有効です。単発イベントではなく、参加者リストを資産化し、LINE公式アカウントや定期連絡で継続的な関係を築きます。不動産の売却だけでなく、相続全般の相談窓口として認知されることが受託の鍵となります。

Q. 税理士や司法書士との連携体制はどう作りますか

A. 相互紹介の仕組みを作ることがポイントです。不動産会社は相続税の試算や登記が必要な顧客を士業に紹介し、士業は不動産の売却が必要な顧客を不動産会社に紹介します。紹介料を設定するのではなく、顧客満足度を共通の指標とし、定期的に情報交換の場を設けることで信頼関係を維持します。

Q. 年収1億円以上の人数が少ない地域でも相続案件を狙う意味はありますか

A. あります。年収1億円以上の人数は富裕層のごく一部であり、相続税の課税対象となる層はそれよりも幅広いためです。たとえば岡山県は年収1億円以上が237人ですが、相続税の課税割合は10%前後と推定され、被相続人数から逆算すると課税対象者は数千人規模となります。この層が保有する不動産の売却ニーズは、地域の不動産会社にとって十分に大きな市場です。

相談窓口

相続案件を売主集客に変える仕組みは、地域の富裕層・高齢者との関係強化、セミナー企画、士業連携という3つの要素で構成されます。貴社の商圏での相続税課税割合や被相続人数を把握し、具体的な集客設計を立てることが第一歩です。

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AUTHOR

松本 龍樹

株式会社MCO 代表取締役/宅地建物取引士。代表プロフィールを見る