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ATTOMのResiScore――物件でなく「街の将来性」をAIが判定

ATTOMのResiScoreは物件価格を査定するのでなく、住宅街を近隣エリア単位で24ヶ月先の市場パフォーマンスを予測し、1-100点でスコア化する米国のサービスです。

米国の住宅街を色分けした地図上に投資ポテンシャルのスコアが表示されている画面

この記事の結論

ATTOM Data Solutionsが2026年6月に発表したResiScoreは、物件価格を査定するのでなく、住宅街を近隣エリア単位で24ヶ月先の市場パフォーマンスを予測し、都市圏内で1-100点にスコア化するサービスです。2026年1月のレジシェア買収で実現しました。日本でも国交省データライブラリー・人流・ポータルを統合すれば技術的には実現可能です。

ATTOMとは――全米1.6億件を統合するデータブローカー

ATTOM Data Solutionsは、米国の不動産データを収集・整備して企業向けに提供するデータブローカーです。自社を「プロパティデータ&インテリジェンス企業」と位置付け、全米1億6,000万件以上の不動産をカバーしています。

公式サイトによれば、所有状況・住宅ローン・取引履歴・境界線・学校・近隣情報などを物件単位で統合して提供しています。日本で例えるなら、登記・固定資産税・都市計画・ハザードマップ・学校区・周辺施設などが全て統合されているイメージです。

ATTOMの前身は、差し押さえ物件情報を扱うポータル「RealtyTrac」でした。2015年にCEOが就任し、2016年にATTOM Data Solutionsへリブランディング。2022年にRealtyTracを売却し、B2C(消費者向け)からB2B(企業向け)へと顧客基盤を転換しました。現在の主要顧客は、金融機関・不動産会社・保険会社・テクノロジー企業・投資会社です。

データブローカーATTOM/CoreLogicと、日本の10年遅れで詳述していますが、ATTOMのビジネスモデルは4層で構成されています。

  1. 基礎データ提供
    物件・所有者・取引履歴などのデータそのものを構造化された基盤として提供。

  2. AVM(自動不動産評価システム)
    2026年5月に発表したAI査定モデルは、全米9,800万件を対象に中央値誤差率2.9%を達成しました。

  3. ResiScore(今回の主題)
    住宅街を近隣エリア単位で24ヶ月先の市場パフォーマンスを予測。

  4. データ配信・統合サービス
    API・バルクデータ・クラウド配信(Snowflake等)で企業の自社システムに組み込み。

ResiScoreの3つの特徴――物件でなく「街」を評価

ResiScoreは従来のAI査定サービスと3つの点で異なります。

1. 分析対象が物件でなく近隣エリア

個別物件の価格を査定するのではなく、同じ都市圏内のどの近隣エリアが相対的に強くなるかをランキングします。投資家が「この都市に投資することは決まっている。では都市内のどの地域に投資すべきか」という判断を支援する設計です。

2. 過去でなく将来24ヶ月先のパフォーマンスを見る

過去の取引データを見せるだけのサービスと異なり、今後24ヶ月でより強い市場パフォーマンスが見込める住宅エリアを特定します。長期トレンド・直近の上昇率・加速度(勢い)・予測成長の強さ・ボラティリティなど複数の住宅市場指標を組み合わせています。

3. 評価を1-100点のスコアで可視化

スコアは都市圏ごとの相対ランクです。80点ならその都市圏内で上位20%に入る住宅エリアを意味します。アトランタとサンフランシスコがともに90点でも、両者が同じ強さを示すわけではありません。それぞれの都市圏内で上位10%に入るエリアであることを示しています。

ATTOM ResiScoreのスコア算出プロセス

01 データ収集 長期トレンド・直近上昇率・加速度・予測成長率・ボラティリティ・近隣指標の6軸
02 AI評価モデル 24ヶ月先の市場パフォーマンスを複数指標から統合分析
03 スコア算出 近隣エリア単位で1-100点のスコアを生成
04 相対ランク判定 都市圏内での順位を決定(80点→上位20%、90点→上位10%)

都市圏ごとに独立した評価のため、異なる都市の同スコアは同じ強さを意味しない

図1 ATTOM ResiScoreのスコア算出プロセス
評価軸 内容 データソース
長期トレンド 過去5年の価格推移 取引履歴
直近上昇率 過去6ヶ月の価格変動 取引履歴・リスティング
加速度(勢い) 価格変動の加速/減速傾向 取引履歴
予測成長率 今後24ヶ月の見込み AI予測モデル
ボラティリティ 価格の安定性 取引履歴
近隣指標 学校・雇用・所得 公的記録・人口統計

2026年1月のレジシェア買収で誕生した経緯

ResiScoreは、ATTOMが2026年1月に買収したResiShare(レジシェア)の技術を統合して実現しました。レジシェアは機関投資家向けの一戸建て賃貸(シングルファミリーレンタル)市場で、不動産の取得・資産管理を支える予測モデル・賃料分析・オペレーション分析を提供していたプラットフォームです。

ATTOMの発表によれば、レジシェアの技術には価格予測・賃料予測・パフォーマンス分析・リスク分析が含まれていました。ATTOMが持つ全米1億6,000万件の巨大データ基盤に、レジシェアが持つ予測モデルを組み合わせることで、ResiScoreが生まれました。

このM&Aは米国PropTech市場の典型的なパターンです。データブローカーは規模の経済が働くため、買収を繰り返して統合基盤を強化します。不動産営業「97%消える」予言の10年後――米国で実際に起きたことで触れていますが、米国のPropTech企業はデータの統合が進んでいるため、AIの精度と応用範囲が日本より広くなっています。

ATTOMと競合するデータブローカー

米国の不動産データ市場には複数の大手が存在します。CoreLogic(現Corealty)は住宅ローン・保険・MLS基盤で巨大、ICEモゲージテクノロジーは住宅ローン周辺のワークフロー、ファーストアメリカンは登記系データ、HouseCanaryは評価・予測に特化しています。

ATTOMは複数領域を横断して使えるデータ基盤として、AI時代に対応した製品を提供しています。ResiScoreはその差別化の一環です。

日本版は実現できるか――必要なデータ統合の条件

技術的には実現可能です。日本にも既に以下のデータソースが存在します。

  • 国土交通省 不動産情報ライブラリー: 取引価格・地価公示・防災情報・都市計画
  • 人流データ: 通信会社(KDDI・ドコモ等)が保有する位置情報
  • 不動産ポータル: 消費者の行動データ・物件データ・検索傾向
  • 衛星データ: 空き地・駐車場・建物状態を把握できるサービス(Tellus等)
  • 公的統計: 人口動態・所得・雇用状況

課題はこれらを物件単位で正しく紐付けて統合することです。現状、日本の不動産データは各所に点在しており、物件IDで一元管理されていません。国土交通省は「不動産ID」の実現を進めていますが、普及は道半ばです。

日本版ResiScore実現に必要なデータ統合

現状:データが点在

  • 国交省 不動産情報ライブラリー(取引・地価・防災)
  • 人流データ(通信会社保有の位置情報)
  • 不動産ポータル(消費者行動・検索傾向)
  • 衛星データ(空き地・建物状態)
  • 公的統計(人口・所得・雇用)

実現に必要な統合基盤

  • 物件ID(不動産ID)で全データを紐付け
  • 物件単位で正しく統合された基盤
  • 地域特性を反映できるデータセット
  • AIが学習可能な構造化データ

技術的には実現可能だが、課題は物件単位での正しい紐付け

図2 日本版ResiScore実現に必要なデータ統合

ATTOMの強みは、全米1億6,000万件のデータを物件単位で統合済みであることです。AIはデータがなければ機能しません。データの量だけでなく、正しく紐付けられているかが何より重要です。

Zillow5億ドル損失が教える「AIに値付けを丸投げする罠」でも触れていますが、AVM(自動不動産評価)は標準的な物件では高精度ですが、ユニークな物件や農村部・高級物件では誤差が大きくなります。日本版ResiScoreを実現するには、地域ごとの特性を反映できるデータセットの構築が必要です。

不動産鑑定士・投資家・仲介での活用例

ResiScoreは3つのユースケースで活用されています。

仕入れ判断の優先順位付け: 同じ都市圏内で複数の投資候補がある場合、将来性の高いエリアを絞り込みます。80点のエリアと40点のエリアでは、同じ価格帯でも24ヶ月後のパフォーマンスが大きく異なります。

売主への説明根拠: 「このエリアは今後2年で上位20%に入る見込みがあります」と根拠付きで示せば、早期売却を避ける判断材料になります。逆にスコアが低いエリアでは早期売却を推奨する理由にもなります。

ポートフォリオの将来性可視化: 複数物件を保有する投資家に各エリアのResiScoreを並べ、リスク分散状況を可視化できます。

日本では不動産会社の商圏分析を無料データだけで完結させる方法で紹介している無料データを組み合わせることで、簡易版のエリア評価は実現できます。

よくある質問

Q. ATTOMのResiScoreは物件価格を査定するのですか?

A. いいえ。ResiScoreは物件価格を査定するのではなく、住宅街を近隣エリア単位で24ヶ月先の市場パフォーマンスを予測し、1-100点でスコア化します。同じ都市圏内でどのエリアが相対的に強くなるかを示すランキングです。

Q. 全国均一のスコアですか?

A. いいえ。都市圏ごとの相対ランクです。アトランタとサンフランシスコがともに90点でも、両者が同じ強さを意味するわけではありません。それぞれの都市圏内で上位10%に入るエリアであることを示します。

Q. 日本でもResiScoreのようなサービスは実現できますか?

A. 技術的には実現可能です。国交省の不動産情報ライブラリー・人流データ・不動産ポータルのデータ・衛星データなど、日本にも部品は揃っています。課題はこれらを統合し、物件単位で正しく紐付けることです。

Q. 不動産会社はResiScoreをどう活用できますか?

A. 仕入れ判断の優先順位付け・投資家への提案資料・売主への説明根拠として活用できます。売主集客では「このエリアは3年後に値上がりする見込みがあります」と根拠付きで伝えられるため、早期売却を避ける判断材料になります。

Q. ATTOMと競合するデータブローカーにはどんな企業がありますか?

A. CoreLogic(現Corealty)が住宅ローン・保険・リスク分析とMLS基盤で強く、ICEモゲージテクノロジーが住宅ローン周辺のワークフロー、ファーストアメリカンが登記系データ、HouseCanaryが評価・予測に強みを持ちます。各社が異なる領域で競合しています。

相談窓口

不動産AIの導入は、扱う物件・組織の規模・現在の業務フローによって最適解が変わります。米国の事例を日本の不動産会社にどう応用するか、データ統合の第一歩をどこから始めるべきかは、貴社の現状によって異なります。

生成AIを貴社の業務にどう組み込むかは、扱う物件・組織の規模・現在の業務フローによって最適解が変わります。株式会社MCOでは、不動産・建設業に特化したAI経営コンサルティングと実装代行、社内定着までの伴走を行っています。まずは公式LINEからお気軽にご相談ください。

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AUTHOR

松本 龍樹

株式会社MCO 代表取締役/宅地建物取引士。代表プロフィールを見る