この記事の結論
ATTOMは全米1.6億件をカバーし、所有・ローン・取引・境界線・学校・評価・リスクを物件単位で統合しています。CoreLogicはMLS基盤とデータ統合プラットフォームを金融・保険業界に提供しています。日本には国交省ライブラリー・不動産ID・ポータル・人流データが存在しますが統合されていません。突破口はAPI企業のM&A・不動産ID実現・民間主導プラットフォームにあり、物件単位の正しい紐づけがAI性能を決めます。
ATTOMとは何か——全米1.6億件を物件単位で統合するデータブローカー
ATTOMはアメリカの不動産データ企業です。不動産に関する膨大なデータを集めて整備し、企業向けに提供する不動産データブローカーとして位置づけられています。
公式サイトによれば、全米1億6,000万件以上の不動産をカバーし、次のデータを扱っています。
- 所有状況
- 住宅ローン
- 取引履歴
- 境界線
- 学校区
- 近隣情報
- 評価分析
- リスク分析(災害・環境)
日本で言えば、登記・固定資産税・都市計画・ハザードマップ・学校区・周辺の施設・住宅ローンの履歴・災害リスク・ポータルのデータが全部統合されているようなイメージです。
ATTOMの強みは、データの量だけでなく物件単位で正しく紐づけられていることです。AIはデータがなければ機能しません。データがあってもバラバラに管理されていると活用できません。ATTOMは物件を一意に識別するIDで全てのデータを統合しています。この点でアメリカの不動産データ基盤において重要なプレイヤーです。
ATTOMが売っているもの
ATTOMのプロダクトは大きく4つのレイヤーに分かれます。
- 基礎データ — 物件・所有者・取引履歴などのデータそのもの
- AVMモデル — 自動不動産評価システム。2026年5月に発表したAI査定モデルは、全米9,800万件を対象に分析し、中央値の誤差率2.9%を達成
- ResiScore — 住宅街を近隣エリア単位で評価し、24ヶ月先の住宅市場パフォーマンスを予測するサービス。2026年1月にレジシェア(機関投資家向け予測モデル)を買収して誕生
- データ配信・統合サービス — API・バルクデータライセンシング・クラウドデリバリー。企業が自社システムに組み込める形で提供
米国と日本の不動産データ統合状況の対比
米国(ATTOM/CoreLogic)
- 物件IDで統合済み
- 所有状況・住宅ローン
- 取引履歴・境界線
- 学校区・近隣情報
- 評価分析・リスク分析
- API提供・バルクデータライセンシング
日本
- 物件IDなし・分散
- 国交省データライブラリー
- 不動産ID(実証実験中)
- LIFULL/SUUMO(ポータル)
- KDDI人流データ
- ハザードマップ・公示地価
- 登記情報提供サービス
米国は物件単位で統合、日本は縦割りで分散
ATTOMのクライアントは、不動産事業者・住宅ローン事業者・保険会社・政府・金融機関・テクノロジー企業などです。ポータルの物件表示・AI査定・住宅ローンの審査・マーケティングのターゲティング・金融機関のポートフォリオ管理など、業務の裏側にATTOMのデータが使われています。
CoreLogic(旧Coreality)——MLSの基盤を提供し、データを統合する巨大プレイヤー
CoreLogicは2025年3月にコタリティとしてリブランディングし、住宅ローン業界を支える金融サービスの会社から、不動産情報・分析・データソリューションの企業へと進化しました。
CoreLogicの強みは次の点にあります。
- MLSの基盤システムを提供している。全米581のMLSが存在し、それぞれのカウンティ(郡)ごとにMLSがある構造です
- 市場データ・公的記録・所有・ローン・税金・境界線を統合したプラットフォームを提供
- 特に住宅ローン・保険・リスク分析に強い
- 不動産取引に必要な登記情報・税金情報・売買履歴・マーケットトレンド・金融情報・学校・デモグラフィー・ジオグラフィー情報・査定書まで瞬時に手に入る
CoreLogicはMLSに対するシステムマトリクスを提供しています。MLS市場データに加え、公的記録・所有・ローン・税金・境界線など、外部に点在するデータを取りまとめて提供しています。
ATTOMとCoreLogicの競合関係——それぞれの強み
米国の不動産データブローカー市場には、複数のプレイヤーが存在します。
| 企業 | 強み |
|---|---|
| CoreLogic | MLSの基盤システム・巨大な不動産会社・保険業界向けに強い |
| ATTOM | 複数領域を横断して使えるデータ基盤としてAI活用を提供 |
| ICEモゲージテクノロジー | 住宅ローンのワークフローに強い |
| ファーストアメリカンデータトリー | 土地の記録・登記系のデータに強い(約70億件の記録済み土地文書をデータベース化) |
| HouseCanary | 評価・予測システムに強い |
| ネイバーフッドスカウト | 金利データ・地域データに強い |
それぞれが強い領域を持っていますが、ATTOMは複数領域を横断して使えるデータ基盤としてAI活用を提供している点で差別化しています。
日本の現状——データは存在するが、統合されていない
日本にも不動産に関するデータは存在します。
- 国土交通省の不動産データライブラリー
- 不動産ID(実証実験中)
- LIFULL/SUUMOなどのポータルサイト
- KDDI人流データ
- ハザードマップ
- 公示地価
- 学校区情報
- 登記情報提供サービス
問題は、これらが統合されていないことです。
国土交通省の不動産データライブラリーは、取引価格・地価公示・ハザードマップ・都市計画などのデータを集めていますが、「過去のデータが見える化されているだけ」であり、物件単位で紐づけられていません。
不動産IDは国土交通省が実証実験を進めていますが、本格運用には至っていません。物件を一意に識別する仕組みがないため、登記・固定資産税・ポータルのデータ・ハザードマップがバラバラに管理されています。
衛星データを使った不動産DXサービスもありますが、未来の予測ではなく「どこに空き地があるか」「どこに太陽光パネルが設置されているか」を把握する現状分析の段階です。
なぜ日本は10年遅れているのか——縦割りと物件IDの不在
日本で統合が進まない理由は、次の構造にあります。
- 縦割りの問題 — 国土交通省・法務局・市区町村・ポータル・通信会社が、それぞれ独自にデータを保有している
- 物件IDの不在 — 物件を一意に識別する「不動産ID」が実現していない
- API連携の遅れ — データ提供企業がAPI提供を始めているが、統合プラットフォームが存在しない
米国では、ATTOMやCoreLogicが民間主導でデータを統合し、API提供やバルクデータライセンシングでビジネス化しています。一方、日本では公的機関がデータを保有しているため、民間主導の統合プラットフォームが生まれにくい構造です。これは米国不動産AI動向の実態でも指摘されている構造的な差です。
突破口——3つの経路で統合は実現する
日本版ResiScoreは技術的に可能です。必要なデータは既に存在しています。
日本で物件単位のデータ統合を実現する3つの突破口
全国版を待たず、自社商圏から実現可能
突破口は次の3つです。
1. API提供企業のM&A
米国ではATTOMがレジシェア(機関投資家向け予測モデル)を買収してResiScoreを生み出しました。日本でも、国交省データライブラリー・ポータル・人流データ・学校情報を扱う企業がM&Aで統合されれば、一気に実現します。
2. 不動産ID実現
国土交通省と不動産テック協会が進めている不動産IDが本格運用に入れば、物件を一意に識別できます。物件IDがあれば、登記・固定資産税・ポータル・ハザードマップ・学校区を紐づけられます。
3. 民間主導の統合プラットフォーム
公的機関の動きを待たず、民間企業が自社エリアのデータを先に統合する動きも出ています。レインズ・公示地価・ハザードマップ・学校情報・過去の成約価格を、自社で管理する物件IDに紐づけてデータベース化すれば、全国版が登場する前に商圏内の優位性を確保できます。ATTOMのResiScoreのような街の将来性予測も、自社商圏から実現可能です。
物件単位で正しく紐づけられているかがAIの性能を決める
AIはデータを統合して判断します。ある物件の「所有状況」「住宅ローン」「境界線」「ハザードマップ」「学校区」がバラバラに管理されていると、AIはそれらを結びつけられません。
ATTOMやCoreLogicの強みは、物件IDで全てのデータを統合していることです。物件IDがあれば、AIは一度に全ての情報を参照して査定・リスク分析・将来予測ができます。
日本の不動産AIが米国に比べて精度が低い理由は、AIの技術ではなくデータ統合の遅れにあります。これは米国AI導入と効果の断層で示された82%導入・17%効果という断層とも関係しています。
中小不動産会社での応用——自社エリアのデータを先に統合した会社が勝つ
全国版の統合プラットフォームが登場するまで待つ必要はありません。自社エリアのデータを先に統合した会社が勝ちます。
具体的な手順
- 自社で管理する物件に「自社物件ID」を付与する
- レインズから取得した過去の成約価格を物件IDに紐づける
- 公示地価・ハザードマップ・学校区情報を物件IDに紐づける
- ポータルの反響履歴・内見回数・成約までの日数を物件IDに紐づける
- このデータベースを使って、AI査定・リスク分析・反響予測を行う
商圏内の数百〜数千件のデータでも、正しく紐づけられていれば実用レベルのAI分析ができます。全国版が登場するまでの間、商圏内で優位性を確保できます。売主集客では、データ分析とYouTube企画を組み合わせることで、地域の将来性を根拠付きで説明できる武器になります。
よくある質問
Q. ATTOMとCoreLogicは何が違うのですか?
A. ATTOMは全米1.6億件の不動産データを物件単位で統合し、API提供に特化したデータブローカーです。CoreLogicはMLSの基盤システムを提供し、市場データ・公的記録・ローン・税金・境界線を統合したプラットフォームを金融・保険業界に提供しています。どちらも「物件単位で正しく紐づけられたデータ」を武器にしている点は共通しています。
Q. 日本で不動産データが統合されない理由は何ですか?
A. 国土交通省・法務局・市区町村・ポータル・通信会社など、それぞれが独自にデータを保有し、物件を一意に識別する「不動産ID」が実現していないためです。不動産IDの実証実験は進んでいますが、本格運用には至っていません。縦割りの構造がデータ統合を阻んでいます。
Q. 日本版ResiScoreは技術的に可能ですか?
A. 技術的には可能です。国交省不動産データライブラリー・KDDI人流データ・ポータルの物件情報・公示地価・ハザードマップなど、必要なデータは存在します。問題はそれを「物件単位で統合する仕組み」がないことです。統合が実現すれば、街の将来性を予測するサービスは作れます。
Q. 中小不動産会社が先に動けることはありますか?
A. 自社エリアのデータを先に統合した会社が勝ちます。レインズ・公示地価・ハザードマップ・学校情報・過去の成約価格を、自社で管理する物件IDに紐づけてデータベース化すれば、全国版が登場する前に商圏内の優位性を確保できます。
Q. 物件単位で正しく紐づけられているかが、なぜAIの性能を決めるのですか?
A. AIは関連するデータを統合して判断します。ある物件の「所有状況」「住宅ローン」「境界線」「ハザードマップ」「学校区」がバラバラに管理されていると、AIはそれらを結びつけられません。物件IDで統合されていれば、AIは一度に全ての情報を参照して査定・リスク分析・将来予測ができます。
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