この記事の結論
議事録文字起こし・請求書一括作成・物件資料の分類/要約は完全自動化、査定・契約書チェックは半自動化(AIが下書き、人間が最終確認)、価格判断・顧客対応は自動化禁止です。277本のスクリプトが示すのは、「人間の判断が必要かどうか」で線を引く実務の地図です。faster-whisperのhotwords機能は無音区間ハルシネーションを起こすため使わず、共通モジュール3関数で社内横展開します。
不動産会社の業務自動化地図とは
不動産会社の業務自動化地図とは、現在の業務を「完全自動化できる」「半自動化(人間の確認必須)」「自動化すべきでない」の3層に分類し、どこまで自動化すべきかを可視化した実務の線引きです。私たちが運用している277本のスクリプトを分析すると、定型処理は完全自動化、判断が伴う処理は半自動化、意思決定は自動化禁止に分かれます。線引きは「人間の判断が必要かどうか」で決まります。
業務の自動化レベル判定フロー
判断の根拠を説明できないものは人間が担当する
完全自動化できる業務(実装277本から)
定型処理は完全自動化の対象です。私たちが実装している277本のスクリプトのうち、以下の業務は人間の確認なしに実行されています。
議事録の文字起こし(plaud_transcribe.py)
商談・内見・社内会議の録音を、faster-whisper large-v3で文字起こしします。処理時間は実音声の約0.7倍(10分の音声を7分で転写)、RTX 5090 Laptop搭載PCで実測しています。無音区間でWhisperが「ご視聴ありがとうございました」等の定型幻覚句を生成する現象があるため、幻覚句を除いた残りが全体の15%未満なら実質無音と判定し、transcriptフィールドを空文字にする処理を組み込んでいます。
請求書の一括作成(freee_create_invoices.py)
freee請求書APIで、9社分の請求書を一括作成します。税区分はコンサル費/業務委託/YouTube編集=課税10%、交通費(実費精算)=税率0です。freee請求書APIにはDELETEが無いため、再実行時は取引先ID × 請求日 × 種別で既存を照合し、あればPUT更新、無ければPOST作成する冪等更新を実装しています。
物件資料の分類・要約(ollama_helper.py)
50ファイル以上の物件資料を、ローカルAI(qwen3:32b)で一括分類・要約します。共通モジュール ollama_helper.py の3関数(classify/summarize/tag_generate)を使えば、社内の他のスクリプトから同じ処理を呼び出せます。モデルは qwen3:32b が標準、軽量処理は qwen3:8b(4.6倍速)を指定できます。
半自動化(人間の確認必須)の業務
判断が伴う処理は、AIが下書きを作り、人間が最終確認する半自動化が適しています。
査定(AI下書き・人間が最終判断)
AIが類似物件・築年数・駅距離から価格を算出し、人間が市場動向・物件の個別事情を加味して最終判断します。顧客情報を外に出さずに物件資料をまとめて処理する方法 では、ローカルAIで物件データを扱う実装を公開しています。
契約書チェック(ラビーネット自動転記デモ)
謄本・売買契約書・重説PDFをAIが読み取り、フォームに自動転記します(手打ち3時間→AI転記15分)。ただし、数値・住所・氏名の最終確認は人間が行います。
自動化すべきでない業務
意思決定は自動化の対象外です。判断の根拠を説明できない、または説明しても顧客が納得しない領域は、人間が担当します。
価格判断(売主への説明責任)
「この価格で売り出すべきか」という判断は、AIが参考値を出しても、最終的に経営者または営業責任者が担当します。売主への説明責任を負えるのは人間だけです。
顧客対応の方針決定(クレーム・トラブル)
クレーム対応・契約トラブルの方針決定は、自動化すべきでありません。顧客の感情・関係性の背景・過去の経緯を踏まえた判断は、AIには担えません。売主への物件説明に必要な透明性チェックリスト では、人間の判断が必要な説明責任の境界線を示しています。
生成AIを貴社の業務にどう組み込むかは、実装の6ステップ で段階的に進める設計を推奨しています。
faster-whisperのhotwords罠(2025-12-10/08-24実例)
faster-whisper large-v3のhotwords機能は、語数が多いほど無音・雑音区間にその語列が延々と挿入されるハルシネーションが起きます。私たちは2025年12月10日と8月24日に実際にこの罠を踏みました。
| 日付 | hotwords語数 | 現象 |
|---|---|---|
| 2025-12-10 | 70語超 | 音声の20.7%(61分中13分)が潰れた |
| 2025-12-10 | 100語超 | 無音区間に顧問先の社長の氏名が延々と挿入された |
回避策は、hotwordsは使わず、vad_filter=Trueのみで転写し、固有名詞は議事録化の段階で文脈から補正する方式です。plaud_transcribe.pyでは、転写時にhotwordsパラメータを与えず、vad_filter=Trueのみで実行しています。この教訓は、商談・内見の録音を議事録にするときの落とし穴と対処 で詳述しています。
共通モジュールで社内横展開する方法
ollama_helper.py は、分類・要約・タグ生成の3つの処理を共通モジュール化したものです。classify(テキスト)で分類、summarize(テキスト, lines=3)で要約、tag_generate(テキスト, n=5)でタグ生成を呼び出します。モデルは qwen3:32b が標準、軽量処理は qwen3:8b(4.6倍速)を指定できます。
ollama_helper.py 共通モジュールの呼び出し構造
| 呼び出し元スクリプト | 使う関数 | 処理対象 |
|---|---|---|
| classify_clipping.py | classify | クリッピングの4パターン分類 |
| enrich_onenote_v2.py | classify + summarize | OneNote蒸留 |
| enrich_pdf.py | summarize + tag_generate | PDF要約 |
1つのモジュールを改善すれば全てのスクリプトが恩恵を受ける
classify_clipping.py(クリッピング分類)、enrich_onenote_v2.py(OneNote蒸留)、enrich_pdf.py(PDF要約)など、社内の複数のスクリプトが ollama_helper.py の3関数を呼び出しています。1つのモジュールを改善すれば、全てのスクリプトが恩恵を受ける構造です。
277本のスクリプトが示す実際の分類
私たちが運用している277本のスクリプトを、完全自動化/半自動化/自動化禁止の3層に分類すると、以下の割合になります。
| 層 | 割合 | 代表例 |
|---|---|---|
| 完全自動化 | 約60% | 議事録文字起こし・請求書作成・物件資料分類・YouTube字幕の教材化 |
| 半自動化 | 約30% | 査定・契約書チェック・重説PDF転記・物件紹介動画の粗生成 |
| 自動化禁止 | 約10% | 価格判断・顧客対応方針・採用判断・値付け判断 |
代表のAI業務環境の実際 では、この3層分類を実務でどう回しているかを公開しています。
スクリプトの命名規則
99_System/Scripts/ 配下に、プレフィックスで用途(plaud_ / freee_ / enrich_)、サフィックスで処理内容(_transcribe.py / _classify.py)を示す命名規則でスクリプトを配置しています。この構成により、スクリプトの役割が一目で分かり、保守性が保たれます。
よくある質問
Q. 議事録の文字起こしで固有名詞が誤変換されますが、faster-whisperのhotwords機能で改善できますか?
A. hotwordsは語数が多いほど無音・雑音区間にその語列が延々と挿入されるハルシネーションが起きます。2025年12月10日と8月24日に実際に踏んだ実例があり、前者は音声の20.7%が潰れました。hotwordsは使わず、vad_filter=Trueのみで転写し、固有名詞は議事録化の段階で文脈から補正する方式を推奨します。
Q. 50ファイル以上の物件資料を一括で要約したいのですが、クラウドAIで直接処理しても大丈夫ですか?
A. 50ファイル以上の一括処理はクラウドAIで直接処理せず、ローカルAI(qwen3:32b)を呼ぶスクリプトを生成して実行してください。コストと情報漏洩リスクの両面で優位です。共通モジュール ollama_helper.py の3関数(classify/summarize/tag_generate)を使えば、社内で横展開できます。
Q. どの業務を自動化すべきで、どの業務は人間が残るべきですか?
A. 定型処理(議事録文字起こし・請求書作成・物件資料の分類)は完全自動化、判断が伴う処理(査定・契約書チェック)は半自動化(AIが下書き、人間が最終確認)、意思決定(価格判断・顧客対応の方針決定)は自動化禁止です。判断の根拠を説明できないものは人間が担当します。
Q. 共通モジュール ollama_helper.py を他のスクリプトから呼び出す方法は?
A. 99_System/Scripts/ollama_helper.py を import して、classify(テキスト)/summarize(テキスト, lines=3)/tag_generate(テキスト, n=5) の3関数を呼ぶだけです。モデルは qwen3:32b が標準、軽量処理は qwen3:8b(4.6倍速)を指定できます。社内の他のスクリプトから同じ関数を呼べば、横展開が完了します。
Q. faster-whisperで転写した議事録に「ご視聴ありがとうございました」が延々と入るのはなぜですか?
A. 無音区間でWhisperが定型幻覚句を生成する現象です。plaud_transcribe.pyでは、幻覚句を除いた残りが全体の15%未満なら実質無音と判定し、transcriptフィールドを空文字にする処理を入れています。この判定ロジックを組み込めば、無音幻覚を自動で排除できます。
相談窓口
不動産会社の業務をどこまで自動化すべきか、人間の判断をどこに残すべきかは、扱う物件・組織の規模・現在の業務フローによって最適解が変わります。私たちは277本のスクリプト実装を通じて、完全自動化/半自動化/自動化禁止の3層分類を確立し、faster-whisperのhotwords罠を回避した議事録文字起こし、freee請求書の一括作成、ollama_helper.py による共通モジュール横展開など、実務で動いている実装をベースに業務自動化地図を設計しています。
生成AIを貴社の業務にどう組み込むかは、扱う物件・組織の規模・現在の業務フローによって最適解が変わります。株式会社MCOでは、不動産・建設業に特化したAI経営コンサルティングと実装代行、社内定着までの伴走を行っています。まずは公式LINEからお気軽にご相談ください。