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顧客情報を外に出さずに物件資料をまとめて処理する方法

50ファイル以上の物件資料・契約書は、クラウドAIに直接送らず、ローカルAI(Ollama)を呼ぶスクリプトで社内一括処理します。コスト削減と情報漏洩リスク回避の両立が可能です。

オフィスのデスクトップPCで不動産書類をバッチ処理している画面

この記事の結論

50ファイル以上の物件資料・契約書は、クラウドAIに直接送らず、ローカルAI(Ollama)で社内処理します。qwen3:32b(標準)/qwen3:8b(4.6倍速)/bge-m3(埋め込み)の使い分けと、共通モジュール3関数(classify/summarize/tag_generate)で、コスト削減と顧客情報保護を両立できます。

なぜ50ファイル以上はローカルAIで処理するのか

クラウドAI(ChatGPT/Claude)に50ファイル、100ファイルを送ると、トークン課金が高額になり、顧客の氏名・住所・取引内容を外部サーバーに送信することになります。不動産業界は国土交通省のガイドラインで個人情報保護が厳格に求められており、外部送信はリスクです。

ローカルAI(Ollama)は自社PC上で動くAIモデルです。処理は社内で完結し、情報は外に出ません。課金もありません。初期投資としてRTX搭載PC(VRAM 16GB以上)が必要ですが、月次で大量処理する場合は3〜6か月で回収できます。

モデル使い分け — qwen3:32b / 8b / bge-m3

RTX 5090 Laptop(VRAM 24GB)での実測データを基に、3モデルを使い分けています。

  • qwen3:32b(標準): 精度が求められる処理。1ファイル約50秒、1,148件で約16時間。
  • qwen3:8b(軽量): Zoom等の同時利用時や軽量分類。4.6倍速。必ず think=False で呼び出します。
  • bge-m3(埋め込み): 類似案件検索。テキストを数値ベクトルに変換し、類似度を計算。

モデル使い分けの判断フロー

処理内容 標準 並行処理中
分類・要約 qwen3:32b
50秒/件
qwen3:8b
11秒/件
think=False
埋め込み検索 bge-m3(常駐1.2GB、2秒/件)

50ファイル以上は全てローカルAI、個別判断はクラウドAI

図1 モデル使い分けの判断フロー(処理内容×件数×同時利用状況)

不動産会社での応用例

  • 物件資料の分類: レインズや自社DBから取得したPDFを「売買/賃貸」「戸建/マンション/土地」「商談中/成約済/見送り」などに自動分類。手作業なら100件で200分、qwen3:8bなら約2時間。
  • 契約書の要約: 過去10年分の契約書を3行要約してデータベース化し、「この条件に近い過去事例」を即座に検索。
  • 顧客情報の埋め込み検索: 問い合わせ履歴や商談メモを埋め込みベクトル化し、新規問い合わせが来たときに「似た条件の過去顧客」を自動で探します。

これらの業務自動化の全体像は不動産会社の業務地図|どこが自動化され、どこに人が残るかで詳しく解説しています。

共通モジュールollama_helper.py — 3関数で社内横展開

ollama_helper.py という共通モジュールで、以下の3関数を実装しています。

  • classify: 種別・ステータス・ドメイン・重要度・タグ・推奨保存先を自動判定。
  • summarize: 指定行数(デフォルト3行)で要約。
  • tag_generate: 日本語タグをN個生成。

ollama_helper.py 3関数の実装と横展開

共通モジュール
ollama_helper.py(classify / summarize / tag_generate)
呼び出し元
classify_clipping.py / enrich_onenote_v2.py / enrich_pdf.py 等
横展開効果
同じロジックを複数箇所で書かず、1か所で保守

from ollama_helper import classify, summarize でインポート

図2 ollama_helper.py 3関数の実装概要と社内横展開パターン

RTX搭載PCでの処理速度実測

RTX 5090 Laptop(VRAM 24GB)での実測データです。

モデル 1ファイルあたり 1,148件の総時間
qwen3:32b(標準) 約50秒 約16時間
qwen3:8b(軽量) 約11秒 約3.5時間
bge-m3(埋め込み) 約2秒 約40分

クラウドAIとローカルAIの使い分け基準

処理内容 クラウドAI ローカルAI
経営判断の材料作成
契約書・提案書の初稿
複雑な推論・仮説検証
50ファイル以上の一括処理
顧客情報を含むデータ
夜間自動実行

代表の実際の業務環境と使い分けの実例は代表のAI業務環境の実際で、AIツール全般の選定基準はAIツールの選び方と情報の線引きで解説しています。

社内処理か外部送信かの判断基準

物件資料・契約書をローカルAIで処理するか、クラウドAIに送るかを決めるとき、以下の基準で判断します。

判断項目 社内処理(ローカルAI) 外部送信(クラウドAI)
個人情報の有無 氏名・住所・電話番号・取引金額・契約内容を含む 匿名化済み、または個人情報を含まない
ファイル数 50ファイル以上の一括処理 数ファイル以内
処理の複雑さ 分類・要約・タグ付けなど定型処理 複雑な推論・仮説検証・戦略立案
契約上の制約 顧客との秘密保持契約で第三者提供禁止 制約なし、または本人同意あり
自動実行の必要性 夜間バッチで自動化 手動実行、または外部API制限内
緊急度 翌朝までに処理すればよい 即座に結果が必要
コスト 初期投資後は追加コストなし 処理ごとにトークン課金

不動産業界では個人情報保護が厳格に求められており、迷ったときは社内処理を優先し、外部送信は最小限にとどめます。

不動産会社が社内で一括処理する実務手順

環境準備

  1. RTX搭載PCの準備: VRAM 16GB以上(RTX 4060 Ti 16GB、RTX 4070 Ti Super等)を用意。
  2. Ollamaのインストール: 公式サイト(ollama.com)からインストーラーをダウンロードし、インストール。
  3. モデルのダウンロード: ターミナルで ollama pull コマンドを実行し、qwen3:32b、qwen3:8b、bge-m3 の3モデルをダウンロード。合計約37GB。
  4. 共通モジュールの配置: 社内の共通ディレクトリ(例: C:\scripts\)に ollama_helper.py を配置。

ファイルの集め方と処理単位

ローカルAIでの一括処理は、ファイルの集め方と処理単位の決め方で効率が変わります。

  • ファイルの集め方: 処理対象のファイル(レインズPDF、契約書スキャン等)を1つのフォルダに集めます。フォルダ名に日付を付けると処理履歴を追いやすくなります。
  • 処理単位: 100〜200ファイル単位で処理します。1,000ファイルを一度に処理すると、失敗時の原因特定が困難です。
  • 結果の確認方法: 処理完了後、出力ファイル10件を目視確認し、分類・要約・タグをチェックします。問題があればプロンプトを調整して再実行します。

実行とスケジュール

  1. バッチスクリプトの作成: 物件資料PDF、契約書等を読み込み、ollama_helper.classify()ollama_helper.summarize() を呼び出すPythonスクリプトを作成。
  2. 夜間自動実行の設定: Windowsタスクスケジューラで、毎晩0時にバッチ処理を実行する設定を追加。

処理が失敗する典型パターンと対処

ローカルAIでのバッチ処理は、環境依存のエラーが起きることがあります。以下は実際に起きた失敗パターンと対処法です。

GPU実行がCPUにフォールバックしている

PC異常終了やスリープ復帰の直後、GPU認識が失われてCPUモードで動作することがあります。処理速度が10分の1以下になります。

確認方法: curl http://localhost:11434/api/pssize_vram が 0 なら CPU フォールバック。

対処: Ollamaサービスを再起動します。

モデルが途中でハングする

特定のファイルでモデルが応答しなくなることがあります。PDFの破損、長すぎるテキスト、画像が多すぎることが原因です。

対処: タイムアウト設定(timeout=120)を入れ、120秒以内に応答がないファイルはスキップします。スキップしたファイルをログに残し、あとで手動確認します。

JSON出力が壊れる

モデルが余分な文字を混ぜたり、閉じ括弧を忘れたりすることがあります。

対処: Pydanticスキーマと format='json' を指定します。それでも失敗する場合は、qwen3:32bに変更すると精度が上がります。

商談・内見の録音を議事録にするときの落とし穴と対処では、Ollamaバッチ処理の前のGPU実行状態確認方法を解説しています。3分診断でS〜D判定 AI活用診断ツールの実装では、削減時間の可視化とROI試算の仕組みを紹介しています。

よくある質問

Q. なぜ50ファイル以上はローカルAIで処理するのですか?

A. クラウドAIで50ファイルを直接処理すると、トークン課金が高額になり、顧客情報を外部に送信する情報漏洩リスクが生じます。ローカルAI(Ollama)なら、自社PCで処理するため課金なし・情報は外に出ません。初期投資としてRTX搭載PCが必要ですが、月次で大量処理する場合は3〜6か月でコスト回収できます。

Q. qwen3:32bとqwen3:8bの使い分け基準は?

A. 標準はqwen3:32b(精度重視)、Zoom等の同時利用時や軽量分類にはqwen3:8b(4.6倍速・精度は若干落ちる)を使います。qwen3:8bは必ず think=False で呼び出します(デフォルトの推論モードだと逆に遅くなるため)。

Q. RTX搭載PCでの実際の処理速度はどのくらいですか?

A. RTX 5090 Laptop(VRAM 24GB)で、qwen3:32bを使った1ファイルあたりの処理時間は約50秒です。1,148件のバッチ処理で約16時間かかります。qwen3:8bなら4.6倍速なので、同じ1,148件を約3.5時間で処理できます。

Q. 不動産会社の顧客情報をクラウドに送るのは法的に問題ありますか?

A. 個人情報保護法上、クラウドサービスが「個人データを取り扱わない」契約になっていれば第三者提供に該当しませんが、クラウドAIへの送信は「AIが内容を読み取る」ため、本人同意が必要になる可能性があります。不動産業界は国土交通省のガイドラインで個人情報保護が厳格に求められており、ローカル処理なら送信リスク自体が発生しません。最新の要件は個人情報保護委員会または専門家にご確認ください。

Q. 共通モジュールollama_helper.pyを社内で横展開するには?

A. ollama_helper.pyを99_System/Scripts/などの共通ディレクトリに置き、各バッチスクリプトの冒頭で from ollama_helper import classify, summarize でインポートします。3関数(classify/summarize/tag_generate)を使い回せるため、同じロジックを複数箇所で書かずに済みます。

相談窓口

50ファイル以上の物件資料・契約書を社内で一括処理する仕組みは、RTX搭載PC選定、モデルのダウンロード、共通モジュールの実装、バッチスクリプトの作成、夜間自動実行の設定など、複数の技術領域にまたがります。

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AUTHOR

松本 龍樹

株式会社MCO 代表取締役/宅地建物取引士。代表プロフィールを見る