この記事の結論
ローカルH3(構図出し4分/本・原価0円)でプリビズを作り、承認後にSeedance(30秒$7.12)で本番生成する2段階で、採用ティザー30秒4カット構成を約2時間(生成70分+組み立て30分)で完成させた。撮影ゼロ日・原価ほぼゼロの実証実験で得た実測データと、踏んだ落とし穴10個の対処法を公開する。
撮影ゼロで動画を作る実証実験の結果
AI動画生成とは、テキストプロンプトから動画クリップを自動生成する技術で、撮影・収録なしで動画制作を完結できる仕組みである。
2026年8月、私たちは海運会社の採用ティザー動画を「撮影ゼロ日・原価ほぼゼロ」で制作する実証実験を行った。従来なら撮影日調整に1〜2週間、外注費15万円、納品まで3週間かかる案件を、2日で完成させた。
結論を先に言えば、ローカルAI(MiniMax H3)は「動きの質が本番級ではない」ため、プリビズ専用と割り切る。本番はSeedance等のAPI生成を使い、構図確認後にカット単位で課金すれば、無駄撃ちなく品質を担保できる。
H3とSeedanceの使い分け — プリビズと本番の役割分担
AI動画生成には、ローカル(RTX 5090搭載PC)で動くMiniMax H3と、API課金で使うSeedance 2.5の2系統がある。両者の役割分担を明確にしないと、品質不足か、無駄撃ちのどちらかに陥る。
私たちが2日の実証で得た結論は以下である。
H3の役割(原価0円): - 構図出し・プロンプト開発 - 動く絵コンテ(クライアントの方向性確認) - APIクレジットを無駄撃ちしないための事前検証装置
Seedanceの役割(30秒$7.12): - 本番生成(承認後のみ課金) - カット単位で5秒×N本を発注 - 実船・実物写真が入手できたらi2v(画像to動画)が本命
H3とSeedanceの使い分けと実測時間
プロンプト開発の試行錯誤はローカルで無料、構図が決まってからAPI課金に進む2段階で無駄撃ちを防ぐ
この分離により、プロンプト開発の試行錯誤はローカルで何度でも回し、構図が決まってからAPI課金に進むことができる。判断基準は「静止フレームではなく、再生して動きの質を人間が見る」である。Seedanceも被写体が汎用化する(船が大型化・年式が古くなる)ため、実船・実物写真が入手できたらi2v(画像to動画)で生成するのが本命である。
30秒4カット構成の実測工程
採用ティザー30秒4カット構成の実測工程は以下である。
| 工程 | 所要時間 | 実行内容 |
|---|---|---|
| 絵コンテ設計 | 30分 | カット表+コピー+ナレ原稿。クライアントのサイト・資料からトーンを拾う |
| H3生成(0.4MP構図出し) | 約16分 | 4カット×4分/本。864×480で構図確認 |
| H3生成(1.0MP選別) | 約54分 | 当たりを3本選び、1376×768で再生成。約18分/本×3 |
| QC | 10分 | フレーム抽出して向き・年式・文字・破綻を確認 |
| 音声 | 20分 | ナレーション(ElevenLabs)+環境音(ロイヤリティフリー素材) |
| 組み立て | 30分 | DaVinci Resolve MCPでプロジェクト作成→取り込み→タイムライン→書き出し |
| 合計 | 約2時間40分 | 実際の稼働は生成待ち時間を除き約1時間 |
承認フローと課金タイミング(30秒4カット構成)
承認前は何度でも試行可能。課金はクライアントOK後のみ開始
RTX 5090 Laptop実機での実測ベンチマーク
私たちが使用したのはRTX 5090 Laptop(VRAM 24GB)である。以下は、MiniMax H3での実測時間である。
| 解像度 | 時間 | 用途 |
|---|---|---|
| 864×480 (0.4MP) | 約4分/本 | 構図出し・量産 |
| 1376×768 (1.0MP) | 約18分/本 | 納品候補(プリビズまで) |
| Seedance 720p 30秒 | 2〜4分・$7.12 | 本番生成(カット単位) |
20steps・5秒・音声付きの設定である。この実測データから、「構図出しは864×480で回し、当たりを1376×768で確認する」運用を標準化した。
シード固定で同一内容の解像度違いが得られるため、低解像度で構図を確定してから高解像度で再生成できる。
踏んだ落とし穴と対処法
実証実験で踏んだ落とし穴10個と対処法を列挙する。すべて実際に踏んだものである。
- ComfyUIのモデルDLは無言で止まり"Completed"と誤表示 → バイト数を必ず実測。復旧は
hf download(自動再開) - 失敗実行がVRAMを掴んだまま → CUDA OOM。ComfyUI完全終了で解放
--disable-pinned-memory必須 → 無いと20GB級モデル読込でHostBuffer.read_file_slice failed- CLI起動は
--extra-model-paths-config必須 → 無いと共有モデルフォルダを見ずに「モデル不足」 - Python 3.14でResolveスクリプティング不可 → 3.11固定
- MCP SDK 2.x非互換 →
mcp[cli]<2に固定 - PyPIのdavinci-resolve-mcpは別物(9ツール) → 440ツール版はgit+URLで導入
- サーバーはPowerShellウィンドウと運命共同体 → 閉じるとReconnecting。起動バッチ+最小化運用
- ブラウザ自動操作は二重に不可(拡張のlocalhost遮断+トンネルドメイン遮断) → APIで叩くのが正解
- Seedanceは被写体が汎用化する(船が大型化・年式が古くなる) → 向き・新しさ・文字なしをプロンプトで明示。実写真i2vが根本解
これらの落とし穴は、環境構築の2日間で全て踏んだ。特に1と2は、「生成が終わったはずなのに動画が出てこない」という症状で現れ、原因特定に1時間を要した。
音声の罠 — 生成クリップ音声を使ってはいけない理由
H3もSeedanceも動画に音声を焼き込んで出力する。その中身は中国語やでたらめな日本語で、そのまま環境音として混ぜると外国語が入る。実例として「那是二爺收過二口」という中国語が入った動画を納品直前に発見した。
生成クリップの音声は常に不使用とし、環境音はロイヤリティフリー素材を別途敷く。
もう1つの罠は、ffmpeg の amix=duration=first である。これは先頭入力の長さで音声全体を打ち切る。遅延させた音声を先頭に置くと、そこで音声トラックが終わる。実例として、84.7秒の動画で音声が23.7秒しかなく、インタビューが全消失した。
対処は、動画尺ちょうどの anullsrc を先頭入力に固定し、ミックス後に音声尺と映像尺の一致を機械検証する。
完成後の音声検証3点を必須とする。
- 音声ストリーム長 == 映像ストリーム長
- 全セリフがwhisperで検出できる(1行ずつ固有語句の存在を確認)
- 検出言語が ja のみ(外国語混入なし)
これらの検証を自動化することで、人間のチェック漏れを防ぐ。音声と映像のストリーム長の不一致は、ffmpegのJSON出力で機械的に検出でき、納品前の品質担保に直結する。音声トラックの検証手順の詳細はAI生成動画の音声トラック検証と落とし穴で解説している。
いくらかかるのか — 原価計算
30秒4カット構成の原価計算を示す。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| H3生成(ローカル) | 0円(電気代のみ) |
| Seedance生成(30秒) | $7.12(約1,070円・1ドル=150円換算) |
| 4カット分 | 約4,280円 |
| ElevenLabs(ナレーション) | 無料枠内(月10分まで) |
| 環境音・BGM | 0円(ロイヤリティフリー素材) |
| DaVinci Resolve Studio | 買い切り済み(約39,980円・初回のみ) |
| 合計 | 約4,280円/本 |
外注なら15万円が4,280円になる。
不動産会社・建設会社がこの仕組みを使うなら
不動産会社・建設会社がこの仕組みを使う現実的な用途は、採用ティザー(新卒・中途の採用サイト埋め込み)、会社紹介(商談前デモで受注率向上)、物件紹介(売主向けサイト埋め込み・実写真i2v対応)、売主集客のVSEO(YouTube月10本ペース投稿)である。撮影不要で量産できるため、不動産会社のYouTube台本、6つの型で反響を取る方法で示した初期30本のテーマリストを、撮影なしで回せる。
商談前にデモを見せる使い方は、私たちが実際に使っているAI業務環境の全体像でも触れた「動くものが残る」経営参謀の立ち位置と同じである。提案書ではなく、動くデモで受注する。
よくある質問
Q. 撮影なしでも本当に使える品質の動画が作れますか?
A. ローカルH3は「動きの質が本番級ではない」ため、プリビズ専用です。本番はSeedance等のAPI生成を使い、構図確認後にカット単位で課金すれば、無駄撃ちなく品質を担保できます。
Q. どのくらいの時間と費用がかかりますか?
A. 30秒4カット構成で約2時間(生成70分+組み立て30分)、原価は本番API課金で30秒約$7.12です。外注なら3週間・15万円が即日・原価ほぼゼロになります。
Q. ローカルH3とSeedanceはどう使い分けるのですか?
A. H3は構図出し・プロンプト開発・動く絵コンテの段階で使い(原価0円)、クライアント承認後にSeedanceで本番生成します(カット単位課金)。H3の静止フレームは良いが再生すると微妙なため、本番には使いません。
Q. 生成した動画の音声はそのまま使えますか?
A. 使えません。H3もSeedanceも動画に音声を焼き込んで出力しますが、中国語やでたらめな日本語が入るため、クリップ音声は常に不使用です。ナレーションはElevenLabs、環境音はロイヤリティフリー素材を別途敷きます。
Q. 不動産会社や建設会社がこの仕組みを使うなら、どんな用途が現実的ですか?
A. 採用ティザー、会社紹介、物件紹介、売主向けサイトの埋め込み動画が現実的です。撮影日調整や外注待ちがなく、即日修正できるため、商談前に「あなたの会社の動画がもうできています」デモで受注率を上げる使い方もできます。
相談窓口
貴社の業務にAI動画制作を組み込むかは、扱う物件・組織の規模・現在の業務フローによって最適解が変わります。私たちは実証実験で得た実測データと、踏んだ落とし穴10個の対処法を、貴社の環境に当てはめる支援を行っています。
採用ティザー・会社紹介・物件紹介動画の内製化、または商談前デモの制作代行まで、撮影ゼロ日・原価ほぼゼロの仕組みを貴社に実装します。
生成AIを貴社の業務にどう組み込むかは、扱う物件・組織の規模・現在の業務フローによって最適解が変わります。株式会社MCOでは、不動産・建設業に特化したAI経営コンサルティングと実装代行、社内定着までの伴走を行っています。まずは公式LINEからお気軽にご相談ください。